著者
芹田 敏夫 月岡 靖智 花枝 英樹
出版者
日本ファイナンス学会 MPTフォーラム
雑誌
現代ファイナンス (ISSN:24334464)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.57-93, 2022-02-15 (Released:2022-02-14)
参考文献数
30

本稿は,パッシブ型ファンドの持ち株比率と企業のガバナンスおよびパフォーマンスの間の関係を検証している.検証において,パッシブ型ファンドの持ち株比率が抱える内生性の問題に対処するため,日経平均採用企業であるかどうかを操作変数とする操作変数法を用いている.検証の結果,以下のことを発見している.(1)パッシブ型ファンドの持ち株比率が高い企業ほど,社外取締役比率の改善が促されている.(2)パッシブ型ファンドは業績の好調な企業の経営トップ選任議案に反対票を投じない傾向にあり,一方で業績が不調な企業の経営トップ選任議案には反対票を投じる傾向にある.また,パッシブ型ファンドは買収防衛策導入関連議案に反対票を投じる傾向にある.(3)パッシブ型ファンドの持ち株比率が高い企業ほど,株式投資収益率が高い.以上の結果は,日本でもパッシブ型ファンドが企業のガバナンスとパフォーマンスの改善に一定の役割を果たしていることを示している.