著者
有山 薫
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.205-220, 2014-03-05 (Released:2014-03-31)
参考文献数
32
被引用文献数
2 1

食品の産地表示は商品選択において最も基本的な情報であり,消費者の関心が高いことから,正しい表示がなされていることが食品の信頼性を保つ上で重要である.また,産地表示はブランド戦略にも利用されており,高い付加価値を持つ産地ブランドを維持するために表示の偽装は見逃すことができない.そこで,食品の産地を科学分析により判別する研究が偽装防止のために行われてきた.本稿では,食品の産地判別法として日本で最初に実用化された,誘導結合プラズマ質量分析法を用いた多元素の濃度組成による判別法がいかに開発されたかについて紹介する.別の判別指標として重元素同位体比は地質情報を中心とした生育地の情報がそのまま農産物等に移行するため,信頼性の高い産地判別を可能とする.この指標を用いた産地判別法の開発が待ち望まれていたが,重元素としてSrとPbの同位体比を用いた方法がようやく実用化に至ったことから,この判別法の最新の研究例を紹介する.
著者
有山 薫
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.109, no.6, pp.402-409, 2014-06

昨年の秋ごろレストランにおける食材の誤表示が発覚し,食品の原材料,産地の表示問題が改めて注目を集めた,酒類については地理的表示に関する表示基準により,本格焼酎の「壱岐」,「球磨」,「琉球」,「薩摩」,清酒の「白山」が保護されているところであるが,平成25年7月,ワインの「山梨」も新たに国税庁長官から指定されている。また,果実酒の平成24年度の課税移出数量は約35万KLとなっており,ワインがかなり普及してきている。しかしながら,本稿には日本産ブドウ原料との表示がある市販ワインの原料が外国産である可能性が示されている。ワイン製造に携る方々には本稿をよくお読みいただき,もう一度自社製品の表示について消費者の視点に立って見直して頂きたい。