- 著者
-
有村 洋平
- 出版者
- 九州大学
- 雑誌
- 奨励研究
- 巻号頁・発行日
- 2015
【目的】アリピプラゾールは、統合失調症や気分障害に頻用される非定型抗精神病薬であるが、アカシジアや不眠、神経過敏等の副作用の発現により、投薬が途中で中止されることが問題となっている。アリピプラゾールは、血液中で大部分(99.8-99.9%)が血漿蛋白と結合しており、ごく一部の非結合型成分が薬理作用を発揮する。他剤との併用により血漿蛋白への結合が競合すると、非結合型のアリピプラゾール濃度が上昇し、副作用の発現につながる可能性が考えられる。しかし、アリピプラゾールの副作用によってどの程度投薬が中止されるのか、その忍容性における併用薬剤の関連性を検討した報告はほとんどない。そこで本研究では、アリピプラゾールの忍容性に及ぼす血漿蛋白結合率が高い併用薬剤の影響を明らかにすることを目的とした。【方法】2010年4月1日~2014年3月31日の間に、九州大学病院精神科神経科に入院し、アリピプラゾールが新規に開始された患者104名を調査対象として、アリピプラゾール投薬開始から8週間における服薬状況および副作用発現状況について調査を行った。さらに、アリピプラゾールの投薬を8週間継続した患者を投薬継続群、副作用を理由にアリピプラゾールの投薬が途中で中止となった患者を投薬中止群とし、血漿蛋白結合率が高い薬剤の併用率を比較した。【成果】アリピプラゾールの副作用によって投薬が途中で中止された患者は22名(21.2%)であった。また、血漿蛋白結合率が90%以上の薬剤の併用率は、投薬継続群では91.5%で、投薬中止群では77.3%であり、両群間で有意な差は認められなかった。さらに、血漿蛋白結合率が95%以上の薬剤の併用率についても同様に、両群間で有意な差はみられなかった。本研究の結果から、アリピプラゾールの忍容性において血漿蛋白結合率が高い併用薬剤の関与は少ないことが示唆された。