著者
若月 俊一 菅野 二郎 林 茂樹 松島 松翠 北出 公俊 有馬 和雄
出版者
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.571-594, 1975

1. 昭和48年と昭和49年の2年にわたり, 全国の5つの病院において, 罹病調査と有病調査を実施した。登録し得た疾病件数は, 前者では160, 309件, 後者では33, 549件である。<BR>2. 罹病調査では, 呼吸器系疾患, 消化器系疾患, 神経系・感覚器疾患, 等が多く, 有病調査では, 循環器系疾患, 消化器系疾患, 呼吸器系疾患等が多かった。すなわち, 感冒, 急性咽頭炎など比較的経過の短いものは前者に多く, 高血圧など経過の長いものは後者に多かった。<BR>3. 性別にみると, 消化器系疾患, 呼吸器系疾患, 不慮の事故, 外傷などは男子に多く, 性尿器系疾患 (膀胱炎等) は女子に多かった。<BR>4. 年代別では20~29才の「お嫁さん」年令の罹患がもっとも多かった。また一般に乳幼児, 小児では, 呼吸器系疾患, 青年・中年層では消化器系疾患, 高年層では循環器系疾患が多くみられた。<BR>5. 職業別では, とくに農家や「農業を主」としているものに, 循環器系疾患, 筋骨格系・結合織疾患, 新生物が多くみられた。とくに筋骨格系・結合織疾患は, 専農女子に多く, 不慮の事故は兼農男子に多くみられた。また非農に多いものは呼吸器系疾患, 皮膚疾患であった。<BR>6. 20年前の罹患調査と比較して, 著しく減少しているのは, 伝染病・寄生虫疾患であり, 増加しているのは, 循環器系疾患, 呼吸器系疾患, 消化器系疾患, 性尿器系疾患, 精神病, 不慮の事故・外傷等であった。すなわち, 感染性の疾患は少くなり, 慢性の成人病を中心とする疾患がふえつつあるといえる。