著者
松島 松翠
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.909-919, 2004 (Released:2005-03-29)
参考文献数
61
被引用文献数
1 1

As regards the chronic disorders brought about by pesticides to human bodies, attempts have been made to review theses that have been published both at home and abroad in the last several years on the basis of epidemiological studies. The chronic disorders that are found to have something to do with pesticides are neurological disorders (Parkinson's disease, peripheral nervous symptoms, poor coordinations and abnormal deep tendon reflexes), mental disorders (mild cognitive dysfunction and neurosis), pulmonary and bronchial disorders, hematopietic disorders (aplastic anemia), thyroid disorders, ocular disorders, immune disorders, natal disorders and birth defects (teratism, spontaneous abortion, complete transposition of the great arteries and cryptorchism), disorders in childhood growth (disorders in social development and attention deficit disorders, among others), genital disorders (reduction in fertility, erectile dysfunction (ED) and oligozoospermia), oncogenesis and carcinogenesis (childhood cancer, leukemia, non-Hodgkin lymphoma, multiple myeloma, others and pulmonary, mammary, cystic, pancreatic, and prostatic cancers).The findings of epidemiological studies do not necessarily produce casual relationships but, as identical findings have come out in many epidemiological studies, it may be argued that they produce findings the casual relationship of which is considerably suspicious. The working of pesticides as chemicals to stir incretion (the working similar to that of estrogen), the working of dioxin contained as a byproduct and the impairment of DNA have something to do with causes to chronic disorders.With not only acute poisoning by pesticides but also chronic disorders, the greatest adverse impacts fall on farmers who are directly engaged in the spraying of pesticides. When it comes to genital disorders, birth defects and tumorigenesis, among others, the spraying of insecticides and the extermination of white ants in and out of the houses ought to be taken into full account.
著者
木根渕 英雄 松島 松翠 西垣 良夫 前島 文夫 永美 大志 臼田 誠 浅沼 信治
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.724-741, 2003-01-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
66

本学会では, 農薬による中毒 (障害) について長年にわたり, 学会員から臨床例の集積・解析研究を行い, 予防, 治療に貢献してきた。しかし, 相当程度存在すると思われる農薬の慢性期の中毒 (障害) については, ほとんど報告されていないのが現状である。そこで, 1999年に農薬の神経障害等特別研究班を発足し, 農薬急性中毒患者救命後に発症した神経障害の症例を調査するとともに, 内外の文献から慢性期の神経・精神障害についての知見を得るべく調査・研究してきた。本学会の臨床例調査では, 遅発性神経障害を疑われる症例が1例報告された。有機リン系農薬を服毒し救命しえたものの, 数十日後に神経障害が認められた症例である。また, 内外の文献を見ると, 1951年にマイパフォックスについて報告された遅発性ニューロパチーは, 主に有機リン系農薬について報告されてきた。この10年でも, 様々な症例が報告されている。また, カーバメイト系殺虫剤などの農薬でも, 遅発性ニューロパチーの報告が散見されている。1984年に使用され始めた除草剤グルホシネート (バスタ) では, 逆行性健忘, 失見当識などが経験されている。これらについては, 各農薬 (系) ごとに総括した。農作業者, 羊害虫の防除者など, 多種類の農薬を長期的に暴露される労働者について, 神経学的・精神学的疫学調査が行われている。また, 有機塩素系農薬および汚染物の母性経路暴露による, 小児の神経・精神発達についても疫学的調査が内外に見られる。それぞれに総括した。
著者
松島 松翠
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.65-73, 1995-07-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
42
被引用文献数
2 2

農薬による慢性中毒 (障害) のうち, 肺・気管支障害, 肝障害, 胃腸障害, 血液・造血器障害, 高血圧・血管障害, 代謝異常, 免疫異常について, 臨床的・疫学的な面から考察した。肺・気管支については, 肺炎像を示すものと慢性進行性肺繊維症を呈するものが主であるが, その他, 喘息, 慢性気管支炎, 肺機能低下等が見られた。肝障害は, 農薬暴露者に多く, 有機塩素剤, TCDDによるものが多く見られた。ワインに残留した砒素の連続摂取で肝硬変を起こした例もある。胃腸障害については, 有機燐剤への持続的暴露によるものや野菜からの連続的摂取によるものがあった。血液・造血器障害については, PCPによる再生不良性貧血やその他の血液疾患が多く見られた。血管障害では, paraquatによる動脈硬化性変化, 代謝異常としてはHCBによるポルフィリン症, 有機塩素剤による高脂血が見られた。また有機塩素剤, 有機燐剤, カーバメイト剤で免疫異常が認められている。農薬にはそれ自身の毒性の他に, 皮膚粘膜刺激性やアレルギー性を有するものも多く, 人体に対する障害は, それらの複合的影響を考える必要がある。
著者
高松 道生 柳沢 素子 町田 輝子 松島 松翠 飯島 秀人 中沢 あけみ 池田 せつ子 宮入 健三 矢島 伸樹 佐々木 敏
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.595-602, 1999-11-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

こんにゃくのコレステロール低下作用について検討し, その健康食品としての意義を明らかにする研究を行った。こんにゃくの成分であるグルコマンナンをチップ化して煎餅状に加工 (以下, マンナン煎餅) し, 総コレステロール200mg/dl以上の当院職員と正常範囲内の当院附属看護専門学校寄宿学生を対象に, 脂質代謝への影響を調査した。毎食後に煎餅を摂取し, 試験期間前後に脂質を中心とする血液検査を行ってマンナン煎餅の脂質代謝への影響を評価した。その結果, マンナン煎餅を摂取する事によって総コレステロール値の低下が認められ, 試験前総コレステロール値の高い群ほどその低下の度合いが大きかった。HDLコレステロールや中性脂肪への影響は認められなかった事から, マンナン煎餅はLDLコレステロールを特異的に低下させる作用を有するものと考えられた。血算や生化学などの検査値には変化を認めず, 腹満や下痢などの消化器症状が一部に観察されたものの, 重症なものではなかった。一方, 試験前後の体重に差はないものの試験期間中の総摂取エネルギーや脂質摂取は減少しており, マンナン煎餅を摂取することが食習慣に影響を与えた事が示唆される。以上から, こんにゃく (グルコマンナン) は直接・間接の作用でコレステロール, 特にLDLコレステロールを低下させ, マンナン煎餅が健康食品として意義を有するものと考えられた。
著者
若月 俊一 菅野 二郎 林 茂樹 松島 松翠 北出 公俊 有馬 和雄
出版者
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.571-594, 1975

1. 昭和48年と昭和49年の2年にわたり, 全国の5つの病院において, 罹病調査と有病調査を実施した。登録し得た疾病件数は, 前者では160, 309件, 後者では33, 549件である。<BR>2. 罹病調査では, 呼吸器系疾患, 消化器系疾患, 神経系・感覚器疾患, 等が多く, 有病調査では, 循環器系疾患, 消化器系疾患, 呼吸器系疾患等が多かった。すなわち, 感冒, 急性咽頭炎など比較的経過の短いものは前者に多く, 高血圧など経過の長いものは後者に多かった。<BR>3. 性別にみると, 消化器系疾患, 呼吸器系疾患, 不慮の事故, 外傷などは男子に多く, 性尿器系疾患 (膀胱炎等) は女子に多かった。<BR>4. 年代別では20~29才の「お嫁さん」年令の罹患がもっとも多かった。また一般に乳幼児, 小児では, 呼吸器系疾患, 青年・中年層では消化器系疾患, 高年層では循環器系疾患が多くみられた。<BR>5. 職業別では, とくに農家や「農業を主」としているものに, 循環器系疾患, 筋骨格系・結合織疾患, 新生物が多くみられた。とくに筋骨格系・結合織疾患は, 専農女子に多く, 不慮の事故は兼農男子に多くみられた。また非農に多いものは呼吸器系疾患, 皮膚疾患であった。<BR>6. 20年前の罹患調査と比較して, 著しく減少しているのは, 伝染病・寄生虫疾患であり, 増加しているのは, 循環器系疾患, 呼吸器系疾患, 消化器系疾患, 性尿器系疾患, 精神病, 不慮の事故・外傷等であった。すなわち, 感染性の疾患は少くなり, 慢性の成人病を中心とする疾患がふえつつあるといえる。
著者
広岡 佑三郎 鈴木 彰 浅沼 信治 黒沢 和雄 阿部 栄四郎 佐々木 喜一郎 桜井 賢彦 河西 朗 松島 松翠
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.198-202, 1984

sallmonella typhimuruin TA98, TA100, TA 1535, TA1537で有機リン系殺菌剤, ジフェニルエーテル系除草剤およびPCNBについて変異原性試験を行なった。<BR>有機リン系殺菌剤ではエスセブン, デス, シュアサイドにそれぞれ変異原性が認められた。また, ジフェニルエーテル系除草剤, MOニップ, X-52およびPCNBにも同様に変異原性が認められた。
著者
須田 秀俊 横山 孝子 松島 松翠
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.103, 2010

<緒言>若月俊一により確立された八千穂村の全村健康管理事業は、50年を経過している。その始まりを調査するなかで、これは戦前からの農村保健運動の成果をとりいれた経過が明らかになったので報告する。 <結果および考察>農村医学会が発足する以前の戦時下すでに、岩手県をはじめとして産業組合が組織をあげて農村保健運動を推進していた。この実行組織として全国協同組合保健協会では、病院建設、国民健康保険代行、保健婦養成の3点に重点をおき、病院建設は岩手県、保健婦養成は島根県や山形県をモデルに進めていた。佐久病院設立においても、そのモデルは岩手県の広域医療組合であった。そのほか、労働科学研究所の農村労働調査所の成果や、当時開設された農村保健館の事業、そして恩賜財団母子愛育会による愛育村の保健婦活動の成果をとりいれていた。そして対住民の現場においては、保健婦業務支援の保健補導員を下部組織におき、産業組合病院が保健指導を支援することを理想としていた。これは、戦後昭和30年代に若月俊一が、八千穂村をフィールドとした全村健康管理活動につながる前史である。 このほか、各地の産業組合病院では、症例研究会が開催されており、栃木県の足利病院や、秋田県の平鹿病院では特に盛んであった。また無医村対策として、保健婦を町村ごとに作られた、国民健康保険組合におくことを目的に保健婦養成に力を入れていた。 しかし昭和18年に、それまで国策の健民運動にそった農村保健運動は、治安維持法違反による指導幹部逮捕により活動停止状態となり、終戦を迎えた。戦時下における保健協会の指導幹部は黒川泰一 高橋新太郎 小宮山新一の3人であった。 昭和30年代に八千穂村の全村健康管理がはじまったころは、各地で数多くの同様な取り組みがなされていた。しかし現在も継続されているのは、八千穂村(現佐久穂町)と沢内村(現西和賀町)ほか数例しかない。農村医学の性質を見出すには、農村保健運動から現在に至る普遍性とは何かの検討が必要である。
著者
若月 俊一 松島 松翠 荒木 紹一 筒井 淳平 白井 伊三郎 高松 誠
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.399-413, 1973-01-10 (Released:2011-02-17)

長野, 愛知, 三重, 徳島, 福岡の5地区において, 同一の調査方法により, ハウス栽培従事者の健康調査を行なった。調査人員は, 昭和45年415名 (男230名, 女185名), 昭和46年458名 (男185名, 女273名) であるが, 別に対照として, 一般農家を昭和45年152名 (男73名, 女79名), 昭和46年281名 (男118名, 女163名) 同一方法で調査した。このうち農繁閑期を通じて同一人を調査できた30代, 40代のものについて, ハウス栽培状況及び健康状況を分析した結果は次の如くである。1) 各地域におけるハウス栽培状況の比較調査対象農家1戸あたりのハウス栽培面積は, 三重。が最も多く, 29.7a, 長野が13.5aでもっとも少なかった。暖房の設備状況は, 各地域によって異なるが, そのうち煙突を装備しているものは, 愛知, 三重, 徳 島では大部分であるが, 長野及び三重では約半数に過ぎなかった。その他副室, 換気窓, 面側扉の設備は地域により差異がある。農薬はハウス内でかなり使われており, 有機硫黄剤が多いが, その他の強毒性殺虫剤も多かった。2) 各地域及び農繁閑期における健康状態の比較労働時間は, 一般に農繁期, しかも女子に多く, 睡眠時間は, 逆に農繁期, 女子は少ない。ハウス栽培作業の最盛期には, ハウス内作業は1日8時間にも及んでいる。農夫症症候群は農繁期に多く, 症状としては, 肩こり, 腰痛が多く, 男子に比べて女子に多い。自覚的疲労症状も同様で農繁期に多く, 女子に多い傾向にある。地域別では, 農夫症症候群は三重, 福岡に多く, 疲労症状の発現率は福岡に多くみられた。検査成績では, 女子に貧血の傾向がみられるが, とくに農繁閑期で大きな差はみられない。地域別には若干の違いがみられた。血清コリンエステラーゼ活性値が20%近く異常値を示したことは, 今後ハウス内の, dermal absorption riskのほかに, inhalational exposureの危険についてもさらに深い調査を行なわねばならないことを示すものと思われる。3) ハウス栽培農家と対照農家の健康状態の比較労働時間は, ハウス栽培農家の方が対照農家に比べて多く, とくに女子において著明である。睡眠時間は, ハウス栽培農家の方が少ない傾向がみられた。農夫症症候群は, 農繁期にはハウス栽培農家に多い傾向がみられ, 症状として, 肩こり, 腰痛, めまい, 不眠などがハウス栽培農家に多い。疲労症状もとくに農繁期には, ハウス栽培農家に高いが, 「頭が重い」「全身がだるい」「肩がこる」「体のどこかがだるい」「足がだるい」 といった症状が多くみられた。また検査成績では, ハウス栽培農家に肝機能異常や血清コリンエステラーゼ活性値低下を示すものが若干みられた。以上の結果により, ハウス栽培従事者には, 一般農家にくらべて, とくに農夫症, 疲労症状等, 自覚症状が多くみられており, これらはハウス病症候群と呼ばれる症候群の一部を構成している。そして, その原因として高温多湿の作業環境, 農薬散布, 作業姿勢等が考えられるが, 今後, 予防対策として, ハウス内の構造の改善, とくに大型換気扇の設置, また労働条件の改善, とくに農薬散布方法の改善等が必要であろう。さいごに, 去る第5回国際農村医学会 (ブルガリヤ・バルナ市) における東欧諸国の研究や調査の発表では, ハウス栽培における農薬散布が原因する健康障害のテーマが, 少なからずとりあげられていたことをとくに付記する。

1 0 0 0 OA 農夫症の研究

著者
松島 松翠 寺島 重信 磯村 孝二 市川 英彦 横山 孝子 大柴 弘子 井出 秀郷 萩原 篤 清水 博昭 白岩 智恵子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.135-144, 1969-03-01 (Released:2011-02-17)

長野県南佐久郡八千穂村の三部落から, 40才代及び50才代の男女113名を選び, 2年間にわたって農夫症々候群を中心に追跡調査を行なった。そのうち4回全部検診及び調査のできた81例について, 次のような結果を得た。1) 労働時間は男に比べて女に多く, かつ逆に睡眠時間は女の万に短かい, とくに40才代にかいて著明である。あきらかに女の万が過労状態であるといえる。また疲労の自覚症状や一般的健康状況, 検査結果, 有病率なども一般に女の万に悪い。即ち女の万が健康障害が多い。2) 農夫症総点数は, 一般に40才代より50才代が, 又, 男より女に多く, 農繁期に増加している。最近2年間の経過では, 男女とも増加しているが, 女の万が増加率が高い。3) 農夫症総点数は, 耕地面積 (一人当り) の多いほど, また乳卵摂取量の少ないほど高い。4) 農夫症総点数は, 疲労の自覚症状 (とくに身体的症状)、有病率と著明に相関している。また諸検査結果 (血圧, 血液, 肝機能等), 心電図, 胃レ線, 腰部レ線結果による異常と若干の相関が認められる。5) 以上の点から, 農夫症は慢性疲労状態, 不健康状態, 疾病状態を表わす一つの健康示標であるといえる。これを減らしていくためには, 農家の生活及び農業全般の根本的な改善がなされなければならない。
著者
浅沼 信治 臼田 誠 安藤 満 松島 松翠 渡辺 俊一 近藤 武 田村 憲治 櫻井 四郎 陳 雪青
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.124-131, 1999-07-20 (Released:2011-08-11)
被引用文献数
1 1

石炭燃焼に由来するフッ素症を調査するため, 日中共同研究を行った。研究は1994年から5年計画で, 日本農村医学会のメンバーと中国衛生部予防医学科学院との問で, 屋内フッ素汚染の調査と健康影響に関する共同研究として実施した。大規模な中国現地調査期間は1995年から1997年の3年間である。調査地域は, 汚染のない対照地域1か所と汚染地域2か所の3地域である。いずれも飲料水にはフッ素汚染のない地域である。調査は, フッ素暴露集団における健康状態を把握し, フッ素症発生と健康状態を検討することを目的に, 屋内外大気汚染濃度の測定と, 小学生高学年50人, 中学生50人, その親100人, 患者50人をそれぞれの地域で選び, 尿中フッ素濃度の測定, 尿中成分分析, 歯牙フッ素症と骨フッ素症の確定診断を実施した。その結果, 水のフッ素汚染がない地域で, 石炭燃焼に由来するフッ素症発症の確認がされた。しかも, その発症は, 石炭燃焼によって汚染された屋内大気中フッ素を直接吸入することによるものではなく, 屋内大気で汚染された穀物の摂取によるものであった。フッ素は石炭だけでなく, 火力調整用に混ぜられる土壌にも多く含まれ, 汚染に大きく寄与していた。汚染の代表的な作物は唐辛子, トウモロコシ, ジャガイモであった。また, 汚染地区住民の尿中にフッ素が大量に検出された。
著者
高松 道生 柳沢 素子 町田 輝子 松島 松翠 飯島 秀人 中沢 あけみ 池田 せつ子 宮入 健三 矢島 伸樹 佐々木 敏
出版者
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.595-602, 1999
被引用文献数
1

こんにゃくのコレステロール低下作用について検討し, その健康食品としての意義を明らかにする研究を行った。<BR>こんにゃくの成分であるグルコマンナンをチップ化して煎餅状に加工 (以下, マンナン煎餅) し, 総コレステロール200mg/dl以上の当院職員と正常範囲内の当院附属看護専門学校寄宿学生を対象に, 脂質代謝への影響を調査した。毎食後に煎餅を摂取し, 試験期間前後に脂質を中心とする血液検査を行ってマンナン煎餅の脂質代謝への影響を評価した。<BR>その結果, マンナン煎餅を摂取する事によって総コレステロール値の低下が認められ, 試験前総コレステロール値の高い群ほどその低下の度合いが大きかった。HDLコレステロールや中性脂肪への影響は認められなかった事から, マンナン煎餅はLDLコレステロールを特異的に低下させる作用を有するものと考えられた。血算や生化学などの検査値には変化を認めず, 腹満や下痢などの消化器症状が一部に観察されたものの, 重症なものではなかった。一方, 試験前後の体重に差はないものの試験期間中の総摂取エネルギーや脂質摂取は減少しており, マンナン煎餅を摂取することが食習慣に影響を与えた事が示唆される。以上から, こんにゃく (グルコマンナン) は直接・間接の作用でコレステロール, 特にLDLコレステロールを低下させ, マンナン煎餅が健康食品として意義を有するものと考えられた。