著者
足立 和隆 大槻 文夫 服部 昌男
出版者
The Anthropological Society of Nippon
雑誌
人類學雜誌 (ISSN:00035505)
巻号頁・発行日
vol.97, no.3, pp.393-405, 1989
被引用文献数
1 2

著者らは,頭蓋の投影輪郭をフーリエ解析することによって,日本人頭蓋形態の時代差を検討してきた。頭蓋の対象となる投影輪郭は,正面観(<i>Norma frontalis</i>),後面観(<i>Norma occipitalis</i>),側面観(<i>Norma lateralis</i>),上面観(<i>Norms verticalis</i>),底面観(<i>Norma basilaris</i>)の5通りである。これらの輪郭を得るためには,古典的な方法として Dioptro-graph を利用することが考えられるが,この方法は手間と時間が非常にかかる。一方,高山は,35mm カメラで焦点距離800mm以上の超望遠レンズを用いれば,写真計測によっても高い精度で頭骨の輪郭が得られることを示した (高山,1980)。著者らも基本的にはこの方法にしたがって頭骨の撮影を行なったが,当初,頭骨を上記の5通りの位置に正確に固定するためにかなりの労力と時間を要した。そこで,本報告に紹介するような,回転式頭骨固定台(Rota-craniophor I)を製作し,利用したところ,ひとつの頭骨において上記5通りの撮影を行なうのに要する時間をかなり短縮することがでぎた。この固定台は回転可能な円盤の上に左右の耳孔を支えるための支柱[aural supPorting unit]が各1本,そして頭骨が水平の場合に眼窩下縁を支えるための支柱[<i>Orbitale</i> pointing unit (1)]が1本,さらに頭骨が垂直の場合に眼窩下縁を支える部品[<i>Orbitale</i> pointing unit (II)]が立った構造をしている。これらの支柱はレールの上を垂直な状態でスライドさせ,任意の位置で固定できるようになっている。耳孔にさしこむ支持棒(aural supPorting rod)および眼窩指示棒(<i>Orbitale</i> pointer)の高さも任意にかえられるが,一般的な頭骨を固定する場合,耳眼水平面が円盤の上,約17cmの位置にくるようにこられを固定するとよい。写真撮影にあたっては,頭骨固定台の円盤の回転軸と左右の耳孔にさしこむ支持棒(aural supporting rod)の中心軸との交点を撮影レンズの光軸が通るように両機材を設置する。頭骨の固定の際にはまず頭骨をカメラのほうに向け,耳孔を支える支柱を左右にスライドさせてナジオンが両画面中央にくるようにする。ここでは,正中矢状面をナジオンを通り,左右の耳孔にさしこむ支持棒の中心軸に垂直な平面と定義する。<i>Orbitale</i> pointing unit (I)で頭骨を水平に固定したら,円盤を回転させることによって,正面観,側面観,後面観の撮影を行な5。円盤は久リックによって90°。ごとに正確に固定される。次に <i>Orbitale</i> pointing unit (1)をはずし,頭骨を前に回転させて眼窩下縁を <i>Orbitale</i> pointing unit (II)で支える。この状態で上面観,そして円盤を180°回転させて底面観の撮影を行なう。撮影された頭骨は,ポリエチレンコートされた寸法精度の高い印面紙に正確に原寸大に焼き付けられ,これらの画像中から頭蓋の輪郭の座標を,ディジタイザーを利用してオソライソでパーソナルコソピュータに入力した。