著者
足立 和隆
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.145-151, 1996 (Released:2007-03-29)
参考文献数
17

人類学には,ヒトを文化面から研究する文化人類学と,ヒトを対象とした生物学である自然人類学がある。ここでは,後者に関して主に形態学の立場から行われている計測法について概説する。計測対象は,化石人類を含めたヒトの骨あるいは現世人類の生体である。世界的に統一された計測点に関して,これら2点間の距離や3点の成す角,そして周径等が測定される。近年では,形態の分析にフーリエ解析等の手法も導入されてきている。測定データは多変量解析によって分析され,形態の特徴,類似点等が明らかにされる。しかし,形態と機能との関連については,まだ未知の部分が多く,形態の特徴を機能と結びつけて分析した研究は少ない。
著者
小山 浩司 古島 弘三 菅野 好規 新津 あずさ 小太刀 友夏 新納 宗輔 上野 真由美 高橋 英司 足立 和隆
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.443-453, 2022-10-01 (Released:2022-09-13)
参考文献数
31

Previous studies have reported that poor posture can induce various musculoskeletal disorders. Recently, poor posture in children has become a problem. This study aimed to determine the characteristics of sagittal spinal alignment in standing and sitting positions in elementary school students and how spinal alignment changes from standing to sitting position. Moreover, it clarifies how poor posture (hyperkyphosis) in the standing position affects sitting posture. This study was conducted among 83 elementary school students. The Spinal-Mouse® System was used to measure the thoracic kyphosis angle (TKA), upper thoracic angle (UTA), lower thoracic angle (LTA), lumbar lordosis angle (LLA), and sacral anteversion angle (SAA) in the standing and sitting positions. Hyperkyphosis was defined as a thoracic kyphosis angle of >40°. Participants were assigned to two groups: hyperkyphosis and non-hyperkyphosis. Significant differences were noted in all spinal alignment characteristics in both the positions. When spinal alignment was changed from standing to sitting, ΔUTA and ΔLTA correlated with ΔLLA and ΔSAA, respectively. A strong negative correlation was noted between ΔLLA and ΔSAA. In the sitting position, TKA, UTA, and LLA were significantly higher in the hyperkyphosis group than in the non-hyperkyphosis group. ΔUTA was significantly higher in the hyperkyphosis group than in the non-hyperkyphosis group when spinal alignment was changed from standing to sitting. The characteristics of sagittal spinal alignment in the sitting position were significantly different from those in the standing position. The study findings suggest that poor posture (hyperkyphosis) in the standing position affects the sitting posture.
著者
足立 和隆 大槻 文夫 服部 昌男
出版者
The Anthropological Society of Nippon
雑誌
人類學雜誌 (ISSN:00035505)
巻号頁・発行日
vol.97, no.3, pp.393-405, 1989
被引用文献数
1 2

著者らは,頭蓋の投影輪郭をフーリエ解析することによって,日本人頭蓋形態の時代差を検討してきた。頭蓋の対象となる投影輪郭は,正面観(<i>Norma frontalis</i>),後面観(<i>Norma occipitalis</i>),側面観(<i>Norma lateralis</i>),上面観(<i>Norms verticalis</i>),底面観(<i>Norma basilaris</i>)の5通りである。これらの輪郭を得るためには,古典的な方法として Dioptro-graph を利用することが考えられるが,この方法は手間と時間が非常にかかる。一方,高山は,35mm カメラで焦点距離800mm以上の超望遠レンズを用いれば,写真計測によっても高い精度で頭骨の輪郭が得られることを示した (高山,1980)。著者らも基本的にはこの方法にしたがって頭骨の撮影を行なったが,当初,頭骨を上記の5通りの位置に正確に固定するためにかなりの労力と時間を要した。そこで,本報告に紹介するような,回転式頭骨固定台(Rota-craniophor I)を製作し,利用したところ,ひとつの頭骨において上記5通りの撮影を行なうのに要する時間をかなり短縮することがでぎた。この固定台は回転可能な円盤の上に左右の耳孔を支えるための支柱[aural supPorting unit]が各1本,そして頭骨が水平の場合に眼窩下縁を支えるための支柱[<i>Orbitale</i> pointing unit (1)]が1本,さらに頭骨が垂直の場合に眼窩下縁を支える部品[<i>Orbitale</i> pointing unit (II)]が立った構造をしている。これらの支柱はレールの上を垂直な状態でスライドさせ,任意の位置で固定できるようになっている。耳孔にさしこむ支持棒(aural supPorting rod)および眼窩指示棒(<i>Orbitale</i> pointer)の高さも任意にかえられるが,一般的な頭骨を固定する場合,耳眼水平面が円盤の上,約17cmの位置にくるようにこられを固定するとよい。写真撮影にあたっては,頭骨固定台の円盤の回転軸と左右の耳孔にさしこむ支持棒(aural supporting rod)の中心軸との交点を撮影レンズの光軸が通るように両機材を設置する。頭骨の固定の際にはまず頭骨をカメラのほうに向け,耳孔を支える支柱を左右にスライドさせてナジオンが両画面中央にくるようにする。ここでは,正中矢状面をナジオンを通り,左右の耳孔にさしこむ支持棒の中心軸に垂直な平面と定義する。<i>Orbitale</i> pointing unit (I)で頭骨を水平に固定したら,円盤を回転させることによって,正面観,側面観,後面観の撮影を行な5。円盤は久リックによって90°。ごとに正確に固定される。次に <i>Orbitale</i> pointing unit (1)をはずし,頭骨を前に回転させて眼窩下縁を <i>Orbitale</i> pointing unit (II)で支える。この状態で上面観,そして円盤を180°回転させて底面観の撮影を行なう。撮影された頭骨は,ポリエチレンコートされた寸法精度の高い印面紙に正確に原寸大に焼き付けられ,これらの画像中から頭蓋の輪郭の座標を,ディジタイザーを利用してオソライソでパーソナルコソピュータに入力した。
著者
小山 浩司 一場 友実 古島 弘三 菅野 好規 新津 あずさ 小太刀 友夏 新納 宗輔 上野 真由美 足立 和隆
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.78-83, 2023 (Released:2023-02-15)
参考文献数
39

〔目的〕スパインマットが胸郭拡張差および呼吸機能・呼吸筋力に与える影響を明らかにすること.〔対象と方法〕健常成人男性30名(年齢20.2 ± 1.6歳)とした.介入方法は,対象を背臥位とし,スパインマットを胸椎部に挿入した.測定項目は,脊柱アライメント,胸郭拡張差および呼吸機能・呼吸筋力であった.〔結果〕介入後に胸椎後弯角度が有意に減少した.また胸郭拡張差は有意な増加を認めた.呼吸機能は最大吸気量が,呼吸筋力では最大吸気圧に有意な増加を認めた.〔結語〕スパインマットの使用により,胸郭拡張差,最大吸気量および最大吸気圧は増加する可能性が示唆された.
著者
史 常徳 西澤 哲 足立 和隆 遠藤 萬里
出版者
日本人類学会
雑誌
Anthropological science : journal of the Anthropological Society of Nippon (ISSN:09187960)
巻号頁・発行日
vol.103, no.5, pp.467-484, 1995-12-01
参考文献数
16
被引用文献数
1 4

直立二足姿勢をとるヒトの脊柱は, 他の動物とは異なった形態を持つことが考えられる。本研究はヒトの脊椎骨の形態と姿勢との機能的な関係を明らかにする前段階として, 椎体の形態的特徴を抽出することを目的として行った。資料はヒト, チンパンジー, ニホンザル, ニホンカモシカである。計測項目は椎体に関する腹背側垂直径, 頭尾側矢状径, 頭尾側横径の6項目である。この結果ヒトにおける椎体の形態的特徴が他の哺乳類と異なる点は, 1) L4とL5の背側垂直径が腹側垂直径より著しく小さい, 2) 椎体横径がC3~C7, T8~最終腰椎まで著しく増加する, 3) 頸椎と腰椎椎体のプロポーションが太く短いということであった。これらの特徴とヒトの直立二足姿勢との関係についての考察を行った。
著者
野坂 千秋 星川 恵里 足立 和隆 渡邊 乾二
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.11, pp.857-863, 2000-11-15 (Released:2009-02-19)
参考文献数
5

「ジャガイモの裏ごし操作」における経験の異なる熟練者と非熟練者の違いを明らかにすることを目的として,運動解析法を用い実験を行った.さらにこの解析によって得られたヘラが裏ごし器を押し付ける力,そしてヘラの角度と裏ごしされたジャガイモの性状との関連を観察した.(1) 熟練者の裏ごしは,力の各成分の最大値・力積が非熟練者に比べ有意に小さく,かつヘラの押し付け時の角度も10°以下のこすりつけ状態をとらない操作であることが明らかとなった.一方,非熟練者の動作は,力の各成分の最大値・力積が熟練者と比較して有意に大きく,かつヘラの押し付け時の角度が小さく,こすりつけ状態の長い操作であることが明らかとなった.(2) 裏ごしされたジャガイモの性状を比較すると,非熟練者のジャガイモ細胞の状態は,熟練者のものに比べ細胞外へ流れ出た澱粉が多く,細胞の損傷が観察された.このことから,裏ごし時の力のかけ方やヘラ角度の状態がジャガイモの細胞壁の損傷に影響することが示唆された.
著者
川田 順造 SOW Moussa DEMBELE Mama SANOGO Klena KASSIBO Breh 中村 雄祐 楠本 彩乃 足立 和隆 坂井 信三 芦沢 玖美 応地 利明 MOUSSA Sow MAMADI Dembele KLENA Sanogo BREHIMA Kassibo SKLENA SANOG ISSAKA BAGAY SAMBA DIALLO BREHIMA KASS 田中 哲也
出版者
東京外国語大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1992

平成5年度は、8年間続けたこの国際学術研究の最終年度にあたり、これまでの研究の方法、組織、内容、成果等について、全般的な総括・反省を行なうとともに、第4巻目の報告書を、これまでと同様、フランス語で作成することに充てられた。報告書をフランス語で作成するのは、第一に研究の成果を、研究対象国であるマリをはじめ西アフリカに多いフランス語圏の人々に還元するためである。第二に、フランス語という、アフリカ研究において長い歴史と蓄積のある国の言語であり、同時に広い国際的通用力を、とくにアフリカ研究の分野でもつ言語で発表することにより、国際的な場での研究者の批判・教示を得、また国際学界への貢献を意図するからである。幸い、この2つの目的はこれまでの3巻の反応をみても、十分に達せられたと思われる。研究分担者であるマリ人研究者も、彼らの公用語であるフランス語で研究成果を刊行し、それがマリをはじめアフリカのフランス語圏の人々、および世界のフランス語を理解する研究者にひろく読まれることに満足し、この面での日本の研究協力に感謝している。他方、フランスをはじめとする世界の研究者からの、この研究報告に対する反応は大きく、巻を重ねるにつれて、送付希望の申込みが、諸国の研究者や研究機関から寄せられている。国際的アフリカ研究誌として伝統のあるフランスの『アフリカニスト雑誌』に第1巻の書評が載ったのをはじめ、学会、論文などでの言及や引用は枚挙にいとまがない。研究の方法、組織については、研究条件等の著しく異なる日本とマリでの共同研究という困難にもかかわらず、マリ側の研究分担者が共同研究の意義をよく理解し、日本人研究者との研究上の協力、便宜供与、成果の共同討議(現地で)、報告書執筆において、誠意をもって協力してくれたことは幸いであった。ただ、マリ国の研究所のコンピューター、ワープロ等の設備の不十分さや故障、郵便事故等に加えて、1991年春の政変に伴なう暴動で研究所の図書や資料、備品が盗難や破壊の被害を受け、この報告書のために準備しておいた貴重な調査資料(録音テープや写真、フィールドノート等)もかなりのものが失なわれて、折角の調査の成果が報告書に十分生かせなかったものもあるのは残念である。それにもかかわらず、マリの研究分担者は、学問的良心に忠実に、内容の充実した報告書を寄せてくれた。1991年の政変の被害で、その年秋締切りの第3巻に報告書を寄せることができなかった、クレナ・サノゴ、ママディ・ダンベレの2人の考古学者は、その欠落を償うべきであるという義務感から、共同の力作レポート1篇のほかに、各自の単独執筆の1篇をそれぞれ寄稿し、報告書全体の広さと厚みを増してくれた。その他の研究者の、調査成果のまとめについては、計画通りないしは、当初の計画をはるかに上まわるもの(例えば、応地利明氏の、熱帯乾燥地の雑穀農業についての、広汎かつ独創的なレポートなど)である。昨年度の現地調査の結果、予定されていた報告書のほか、川田は研究代表者として、8年間の共同研究全体を展望する論考として、「サヘルとスワヒリ」と題する、東西アフリカのアフリカ=アラブ文化の大規模な接触地帯の比較を行なう報告をまとめた。これは川田が年来アフリカ学会等の学会でも発表してきたものの、今回の調査成果をふまえた総括であるが、当研究が対象とする地域である「サヘル」(アラビア語の「緑」「岸」)と東アフリカの「スワヒリ」(「サヘル」の複数形)との対比は、国際学会の視野でもはじめての試みである。また、研究分担者芦沢等によって実施された身体技法と身体特徴についての計測に基づく実証的な研究は、アフリカでの現地調査における文化人類学と自然人類学の共同調査の試みとして、第3巻につづくものであるが、文化を自然の関係を探求する新しい試みとして、予備的な発表を行なった学会(1993年10月日本人類学会・日本民族学会連合大学での楠本等の報告)でも注目されている。その他、坂井、中村、カッシ-ボ、ソ-等の研究分担者も、それぞれの分担課題についての精緻な現地調査に基づく報告をまとめ、独創的な貢献を行なっている。
著者
野坂 千秋 星川 恵里 足立 和隆 渡邊 乾二
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.11, pp.857-863, 2000-11-15
被引用文献数
2

「ジャガイモの裏ごし操作」における経験の異なる熟練者と非熟練者の違いを明らかにすることを目的として,運動解析法を用い実験を行った.さらにこの解析によって得られたヘラが裏ごし器を押し付ける力,そしてヘラの角度と裏ごしされたジャガイモの性状との関連を観察した.<br>(1) 熟練者の裏ごしは,力の各成分の最大値・力積が非熟練者に比べ有意に小さく,かつヘラの押し付け時の角度も10°以下のこすりつけ状態をとらない操作であることが明らかとなった.一方,非熟練者の動作は,力の各成分の最大値・力積が熟練者と比較して有意に大きく,かつヘラの押し付け時の角度が小さく,こすりつけ状態の長い操作であることが明らかとなった.<br>(2) 裏ごしされたジャガイモの性状を比較すると,非熟練者のジャガイモ細胞の状態は,熟練者のものに比べ細胞外へ流れ出た澱粉が多く,細胞の損傷が観察された.このことから,裏ごし時の力のかけ方やヘラ角度の状態がジャガイモの細胞壁の損傷に影響することが示唆された.