- 著者
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望月 明見
小池 純子
成田 伸
田村 敦子
橋爪 祐美
- 出版者
- 自治医科大学
- 雑誌
- 挑戦的研究(萌芽)
- 巻号頁・発行日
- 2017-06-30
初年度より2018年までで「受刑経験のある母親と子どもとの関係性再構築と女性の社会復帰後の体験」の調査に取り組み、質的分析に時間を要した。2019年は、「受刑経験のある母親と子どもとの関係性再構築と女性の社会復帰後の体験」研究の質的研究の分析から【受刑経験のある女性の社会復帰における子どもとの関係の問題】を明らかにした。その問題とは、①経済的な問題で自立して養育が困難②子どもと分離したことによる絆(つながり)の減少・複雑化③人への不信感からの社会的孤立:社会に助けを求めない④パートナーとの関係を重視するため社会復帰に影響する⑤(薬物依存者の場合)薬物との関係性のあるつながりを切ることが難しい、ということを明らかにした。また、この結果と先行研究との知見を合わせ、【受刑経験のある女性の養育に関する問題点】について、更に検討を重ねた。その結果、1.親子分離、親子分離継続による母子間の絆・愛着の希薄、2.親準備性の問題(知識と体験の欠如)、3.世代間伝達(モデルの欠如)、4.母親である者の心身の状況(精神疾患や依存症の回復)、5.孤立した養育環境(資源へのアクセス困難)、6.経済的自立(養育環境の準備)の困難、7.子ども側の問題、8.受刑中に子どもを養育していた者との感情的問題、9.新しいパートナーを得た場合の問題、があることを導き出した。これらの知見は、第60回日本母性衛生学会学術集会や、第75回助産師学会で発表を行った。さらに、これらの受刑経験のある女性の養育に関する問題をふまえて、「子どもを持つ女子受刑者の子どもとの関係性の実態とその支援ニーズに関する研究」で使用する自作の質問紙作成を行い、次年度の調査のための準備を行った。