著者
石谷 勇人 室井 聖史 望月 良輔 石垣 直輝 黒川 純
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.67, 2017

<p>【目的】</p><p>成長期腰椎分離症に対する治療は骨癒合を目的とした装具療法が主に選択され,装具期間中の運動は中止されることが多い.しかし近年では,長期間の運動中止により骨癒合後も競技復帰に期間を要するため,装具期間中に早期理学療法の併用が行われている.本研究の目的は, ジュニアスポーツ選手の腰椎分離症に対する治療として,装具療法と早期理学療法の併用が競技復帰に与える影響を検討することである.</p><p>【方法】</p><p>対象は2012 年から2015 年に腰痛にて当院を受診し,片側L5 分離症と診断され,骨癒合を目的として装具装着を指示されたジュニアスポーツ選手37 名とした.装具期間中に安静にしていた17 名( 装具群) と,早期理学療法として股関節ストレッチ等の運動療法を併用した20 名( 併用群) の2 群に分類した.検討項目は,装具期間,装具療法終了から競技復帰までの期間(復帰期間)を装具群と併用群を比較検討し,各群の癒合率も算出した.競技復帰の定義は,全体練習に参加した日とした.統計処理はMann-Whitney U 検定,χ<sup>2 </sup>検定を用い,有意水準は5%とした.本研究は,当院倫理委員会の承認を得て実施し,対象者に本研究の趣旨,目的等を説明し,同意の上で行った.</p><p>【結果】</p><p>装具期間は装具群96.5日,併用群87.2 日であり,両群間に有意な差はみられなかった.復帰期間は装具群29.3 日,併</p><p>用群19.9 日であり,併用群は装具群よりも有意に短かった(p=0.034).癒合率は装具群76%,併用群75%であり,有意差な差はみられなかった.</p><p>【考察】</p><p>両群とも装具期間に有意差がなく,同等な骨癒合率がみられたことから,早期理学療法の介入は分離部への骨癒合に影響を与えないものと考える.復帰期間において,併用群は装具群に比べて有意に早く練習に復帰していたことから,装具療法と早期理学療法の併用は,柔軟性・筋力が維持でき,装具療法終了後にスムーズなスポーツ動作の獲得が図れることで早期の練習復帰が可能であると考えられる.</p>