著者
矢島 澄鎮 卜部 憲和 朝井 克之
出版者
The Japanese Association for Chest Surgery
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.18, no.5, pp.637-640, 2004-07-15 (Released:2010-06-28)
参考文献数
7
被引用文献数
1

症例は69歳男性.2000年より間質性肺炎のため当院通院中, 2003年1月20日左気胸のため入院.胸腔ドレナージのみで軽快し1月30日在宅酸素療法を導入し退院した.2月7日再発し入院, 胸腔ドレナージ行うも肺瘻改善せず, 3月4日肺瘻閉鎖術を施行した.第3病日再発したため, 再度3月18日肺旗閉鎖術を施行したが, 責任病巣は初回手術とは異なっていた・術後肺瘻は消失したが第2病日再発した.血液検査で第XIII因子は低値であったため, 第6病日より血液凝固XIII因子製剤を5日間投与したところ肺瘻は消失し, 第17病日胸腔ドレーンを抜去し第22病日退院し以後現在まで再発していない.第XIII因子が欠乏した間質性肺炎を合併している難治性気胸例において血液凝固XIII因子製剤投与が有効であったので報告した.
著者
山下 貴司 朝井 克之
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.33, no.7, pp.686-692, 2019-11-15 (Released:2019-11-15)
参考文献数
19

若年者自然気胸は肺胸郭不均衡により発症すると考え,若年気胸患者の肺実質の平均CT値を後ろ向きに調査し,正常肺患者との差違について検討した.若年気胸患者の肺実質の平均CT値を後ろ向きに調査し,正常肺患者との差違について検討した.15歳から25歳の男性,若年気胸患者35例,正常肺患者105例について肺実質平均CT値(HU)と胸腔内容積(mL)について検討したところ,CT値は両側とも有意に気胸群のほうが低かった(右:-846.8/-819.9;p=0.005,左:-843.1/-812.1;p=0.002).胸腔内容積は両群で明らかな有意差を認めなかった.またCT値と胸腔内容積は負の相関を示した.このことから気胸患者における肺胞径は正常肺患者に比べて大きいことが示された.この肺胸郭不均衡が気胸発症の根底にあるため,外科的治療の施行にあたっては肺実質の切除はさらなるリスクになることが懸念され,肺囊胞切除に伴い切除される正常肺実質は最小限に留めるべきであると考えられる.