著者
山中 晃 高橋 鮎子 平井 隆
出版者
The Japanese Association for Chest Surgery
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.81-84, 2002-01-15 (Released:2010-06-28)
参考文献数
13
被引用文献数
2 2

画像所見で肋骨腫瘍が疑われ, 胸腔鏡下に肋骨切除を行った1例を経験した.症例は50歳女性で, 自覚症状はなく, 検診の胸部X線で異常影を指摘された.胸部CTで右第3後肋骨発生の骨軟骨腫が疑われ, 確定診断目的に胸腔鏡下手術が行われた.第6肋間から挿入した胸腔鏡で1.0cm大の白色の球状腫瘤が後胸壁から胸腔側に突出しているのが確認され, 第3肋間のポートから挿入した電気ドリルで肋骨切断線上に穴をあけ, 腫瘤を含む肋骨切除を行った.病理組織学的所見として, 肋骨皮質には変性や破壊はみられなかったが, 肋骨骨膜外に石灰化を伴う線維性結節が認められ, 後肋間リンパ節の炎症性瘢痕像と診断された.術後特記すべき合併症はなく, 術後6カ月後異常はみられない.小切開による切除が困難な一部の領域の肋骨に対して胸腔鏡による胸腔内操作のみの切除術は可能であり, 侵襲も少なく有用な方法と考えられた.
著者
神山 順 西山 勝彦 Shin'ichi Sato 島田 順一 大賀 興一 岡 隆宏
出版者
The Japanese Association for Chest Surgery
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.99-102, 1994-01-15 (Released:2009-11-10)
参考文献数
5

欧米では銃器による胸部穿通性外傷の報告が多くみられるが, 日本では, その発生頻度は極めて低い.今回我々は22口径の拳銃による肺損傷の患者を, 緊急開胸術による直接肺縫合で救命し得た.銃器による穿通性胸部外傷の特徴は, ナイフなどによる他の穿通創とは異なり, 弾丸が通過した部分のみの損傷にとどまらない.今回の症例は, 大きな気道の損傷および大血管の損傷はなく縫合閉鎖によって止血できた.しかし, 症例によっては, 肺損傷が著しく肺葉切除や大血管損傷に対する修復が必要な場合もあり, 術前から補助手段なども考慮しておくことが必要である。
著者
川野 勧 尾高 真 塩谷 尚志 武山 浩 秋葉 直志 落合 和徳 鷹橋 浩幸 山崎 洋次
出版者
The Japanese Association for Chest Surgery
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.535-538, 1998-05-15 (Released:2009-11-11)
参考文献数
9

横隔膜子宮内膜症を病理学的に確認できた月経随伴性気胸を経験したので報告する.症例は44歳の女性で, 月経に伴い繰り返し気胸を発症するため, 精査に加療を目的として入院した, 入院時の胸部X線写真で右肺に脱気率20%の気胸を認めた.1996年6月に手術を施行した.胸腔鏡下に胸腔内を観察したところ, 右肺には異常所見を認めなかったが, 横隔膜の腱様部に多数の小孔を認めたため, 第6肋間に小開胸を追加し同部位を切除した.切除部の病理組織学的所見として, 子宮内膜に類似する管腔構造とその周囲の子宮内膜間質細胞が明確に確認され, 横隔膜に発症した子宮内膜症が気胸の原因と考えられた.横隔膜子宮内膜症において, 本症例のように子宮内膜組織が腺構造まで明確に観察できた症例はまれである.本症例は横隔膜子宮内膜症の原因が空気腹腔経由説であることを支持するものである.
著者
勝海 東一郎 河手 典彦 平野 隆 高橋 秀暢 木下 孔明 平栗 俊介 田口 雅彦 梶原 直央 安富 文典 小中 千守 加藤 治文
出版者
The Japanese Association for Chest Surgery
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.8, no.5, pp.638-642, 1994
被引用文献数
1

46年間無症状で経過したのち血痰, 喀血にて発見された肺内異物 (焼夷弾破片) の一症例を経験したので報告する.肺内異物のうち, 特に本症例の如き鉱物性肺内異物では肺内における異物の移動とそれに伴う臨床症状の発現あるいは異物近傍からの発癌の報告例もあり, たとえ無症状で経過している場合でもその発見機会や症状発現時には可及的に外科的摘出を考慮すべきと思われた.
著者
佐藤 光春 加瀬 勝一
出版者
The Japanese Association for Chest Surgery
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.583-587, 1997-05-15 (Released:2009-11-10)
参考文献数
9

症例は38歳女性.5回目の右気胸で当院に入院した.いずれの気胸も月経の前後3日以内に発症しているため月経随伴性気胸を強く疑い, 根治目的に胸腔鏡下手術を施行した.横隔膜ドーム中央に, 周囲に点状の褐色色素沈着を伴った欠損孔を認め横隔膜欠損による気胸と診断, 同部位を胸腔鏡用自動縫合器で切除した.組織学的にも子宮内膜症と診断した.術後, ホルモン療法に関しては患者希望もあり行わず経過観察としたが2ヵ月後に気胸の再発が認められ, BUZERELIN 900μg/dayの投与を開始し2ヵ月後の現在再発なく外来通院中である.本症の組織像から月経随伴性気胸の発生機序を推察した.また, 治療として外来療法だけでなくホルモン剤による全身療法が必要と考えられた.
著者
深見 武史 堤内 亮博 井上 雄太 吉田 幸弘 村川 知弘 中島 淳
出版者
The Japanese Association for Chest Surgery
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 = The journal of the Japanese Association for Chest Surgery (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.444-447, 2012-05-15
被引用文献数
1

症例は62歳,男性.1953年(8歳時)に甲状腺腫で甲状腺右葉切除後,1955年に全肺野の粟粒状陰影と頚部リンパ節腫脹を指摘された.リンパ節生検と右肺S<sup>3</sup>部分切除術が施行され,甲状腺乳頭癌肺転移,リンパ節転移と診断された.化学療法と放射線外照射施行後も変化は乏しく,経過観察となった.2008年5月検診にて前立腺癌を疑われ,精査中,胸部X線にて左肺腫瘤影を認めた.前立腺生検にて前立腺癌は否定されたが,胸部CTにて左肺上葉に21 mm大の不整な結節と両肺に数mm大の小結節を多数認めた.原発性肺癌もしくは甲状腺癌肺転移を疑い,確定診断目的に胸腔鏡下左上葉部分切除を施行.甲状腺癌肺転移とその多発陳旧性病変との診断を得た.甲状腺癌術後30年以上経過して再発する症例は稀であり,本症例が最長であった.
著者
佐藤 雅美 斎藤 泰紀 遠藤 千顕 薄田 勝男 高橋 里美 菅間 敬治 佐川 元保 永元 則義 藤村 重文
出版者
The Japanese Association for Chest Surgery
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.7, no.6, pp.638-642, 1993
被引用文献数
15 5

悪性中皮腫11例を対象に進展再発様式を検討したその結果, 血行性転移のみの例は無くリノハ行性転移のみの形態をとった例か4例, 血行性およひリノハ行性転移か4例見られたまた術創, 穿刺部位の播種か各1例, 腫瘍か臓側胸膜に浸潤したために発症したと考えられる気胸か4例見られた組織学的に肺門肺内リノハ節を検索しえた3例すへてに転移かみられた肉眼的に完全に切除されたと考えられた症例ては1例を除くと初再発部位は縦隔リノパ節, 術創, 術側胸水と局所再発の形態をとり全例6ヵ月以内に再発していたこれらの事より悪性中皮腫に対しては肺門, 縦隔をも加えた系統的なリノハ節郭清や術中の胸腔内洗浄, 術衣, 手術器械の交換なとを考慮すへきと考えられたまた高齢者の気胸症例ては本疾患を念頭におくへきと考えられた
著者
高橋 剛士 福瀬 達郎 倉橋 康典 木場 崇之 高橋 鮎子 福田 正順 妻鹿 成治 板東 徹 田中 文啓 平田 敏樹 越久 仁敬 長谷川 誠紀 寺田 泰二 池 修 和田 洋巳 人見 滋樹
出版者
The Japanese Association for Chest Surgery
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.13, no.5, pp.685-689, 1999-07-15 (Released:2009-11-11)
参考文献数
11

上肢に症状を呈したBuer墓er病に対して胸腔鏡下交感神経切除術が奏功した一例を経験したので報告する.症例は46歳, 男性.一日約40本, 25年の喫煙歴があった.約半年前から両上肢の指末梢側を中心として痺れ, 冷感が出現し始めた.Buerger病との診断にて星状神経節ブロック術を受けたが症状の改善は一時的で, 疼痛も増悪してきたため両側胸部交感神経節切除術を施行した。術直後より癖痛, 痺れ, 冷感の著しい改善を認め, 術後6週間を経た時点では痺れ, 冷感は全く認められず, 術前潰瘍化していた指の完全治癒を認めた.サーモグラフィーにても上肢末梢皮膚温の著明な上昇を認めた.レーザードップラー血流計を用いて指末梢側の組織間血流を計測したところ, 症状の改善とよく一致して血流の増加を認めた.このことからBuerger病における術前術後の組織間循環の評価に際してレーザードップラー血流計が有用であると考えられた.
著者
米地 敦 樋口 光徳 塩 豊 鈴木 弘行 藤生 浩一 管野 隆三 後藤 満一
出版者
The Japanese Association for Chest Surgery
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.193-198, 2002-03-15 (Released:2010-06-28)
参考文献数
12
被引用文献数
6 6

症例は56歳女性.持続腹膜透析 (continuous ambulatory peritoneal dialysis: 以下CAPDと略す) 施行中に透析液の消失と胸水貯留があり精査のために当院に入院した.胸腔腹腔シンチで横隔膜交通症と診断された.胸腔鏡下に手術施行し横隔膜に責任病変を認め外科的な治療にてCAPDの再開に成功した.横隔膜交通症は保存的に加療されることが多く, その半数でCAPDを断念し血液透析に移行している.外科的に治療された症例を検索したところ12例の報告があり, 10例でCAPDの再開に成功していた.胸腔鏡下手術は侵襲が少なく優れた術式であり, 責任病変の有無を調べるという診断的意味も含めて有効な手段だと考えられる.
著者
尾崎 良智 井上 修平 藤野 昇三 紺谷 桂一 澤井 聡 鈴村 雄治 花岡 淳 藤田 美奈子 鹿島 祥隆 古川 幸穂
出版者
The Japanese Association for Chest Surgery
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.14, no.6, pp.726-730, 2000-09-15 (Released:2010-06-28)
参考文献数
14
被引用文献数
3 2

入院中に喀毛症 (trichoptysis) を認め, 左上葉気管支と交通のあった縦隔奇形腫の1手術例を経験した.症例は36歳, 女性.1995年6月の検診で左上肺野に異常陰影を指摘され, 血疾が出現したため当科に入院した.入院中に喀毛をきたし, 縦隔成熟型奇形腫の気道内穿破と診断された.同年7月に縦隔腫瘍摘出および左上区切除術を行った.切除標本で腫瘍は左B3気管支に穿破していた.縦隔成熟型奇形腫は比較的高頻度に隣接臓器, 特に肺・気管支への穿孔をきたすが, 画像診断が進歩した現在では, 喀毛症により診断される例は極めてまれである.穿孔する原因としては腫瘍内の膵, 腸管組織による自家消化作用が注目されているが, 本症例では, 膵, 腸管組織は認められず, 腫瘍内容物の増大に伴う嚢胞内圧の上昇と周囲組織との炎症性癒着が穿孔の主たる原因と考えられた.
著者
塩野 裕之 桑原 修 前田 元 太田 三徳 宮崎 実
出版者
The Japanese Association for Chest Surgery
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.8, no.7, pp.773-778, 1994-11-15 (Released:2009-11-10)
参考文献数
10

国立療養所刀根山病院外科において縦隔郭清を伴う肺癌切除術 (以下, 肺癌切除術) 後の乳糜胸を10年間で8例経験した.4例は保存的に治癒したが, 残る4例は再開胸術を要した.後者では再開胸術前に脂肪を経口投与することにより, 胸管損傷部位が明らかとなった.そこで術後乳糜胸予防を目的として, 麻酔導入時に経鼻胃管より脂肪 (牛乳) を注入し, 胸管の流量を増加させ, 縦隔郭清時および術野洗浄時に胸管と乳糜瘻が容易に視認できるようにした.最近14ヵ月間の肺癌切除症例55例全例に対してこの方法を併用したところ, 術後乳糜胸の発症は認めず, また注入に伴う合併症はなく, 乳糜胸予防に有効と思われた.
著者
樋口 光徳 郡司 崇志 鈴木 弘行 櫛田 正男 矢内 康一 管野 隆三 大石 明雄 薄場 彰 井上 仁 元木 良一
出版者
The Japanese Association for Chest Surgery
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.34-39, 1997-01-15 (Released:2009-11-10)
参考文献数
28
被引用文献数
4 2

検診で胸部異常陰影を指摘され原発性結節性肺アミロイドーシスと診断された48歳の男性を経験したので報告する。胸部X線写真およびCT上, 両側肺に石灰化を伴う多発性の結節影 (2~20mm) を認めた.術前, 気管支鏡下検査で確定診断が得られず, 胸腔鏡下に最も大きな左肺S9の腫瘍 (20×18×15mm) を切除した.組織学的検索でAA型アミロイドーシスであることが判明した。術後の全身検索では他臓器にアミロイドの沈着を認めず, 原発性肺アミロイドーシスと診断した.退院後16ヵ月の現在も特記すべき症状の変化もなく経過良好である.原発性肺アミロイドーシスは術前に診断を確定することは困難であるが肺癌との鑑別および確定診断のため胸腔鏡検査は有用である.また, AA型アミロイドーシスは, 結合織疾患や原発性マクログロブリン血症, あるいは悪性リンパ腫などを併発することがあり, 長期にわたる経過観察が必要である.
著者
矢島 澄鎮 卜部 憲和 朝井 克之
出版者
The Japanese Association for Chest Surgery
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.18, no.5, pp.637-640, 2004-07-15 (Released:2010-06-28)
参考文献数
7
被引用文献数
1

症例は69歳男性.2000年より間質性肺炎のため当院通院中, 2003年1月20日左気胸のため入院.胸腔ドレナージのみで軽快し1月30日在宅酸素療法を導入し退院した.2月7日再発し入院, 胸腔ドレナージ行うも肺瘻改善せず, 3月4日肺瘻閉鎖術を施行した.第3病日再発したため, 再度3月18日肺旗閉鎖術を施行したが, 責任病巣は初回手術とは異なっていた・術後肺瘻は消失したが第2病日再発した.血液検査で第XIII因子は低値であったため, 第6病日より血液凝固XIII因子製剤を5日間投与したところ肺瘻は消失し, 第17病日胸腔ドレーンを抜去し第22病日退院し以後現在まで再発していない.第XIII因子が欠乏した間質性肺炎を合併している難治性気胸例において血液凝固XIII因子製剤投与が有効であったので報告した.
著者
竹内 茂 長田 博昭 小島 宏司 島田 厚 栗栖 純穂 横手 薫美夫 山手 昇
出版者
The Japanese Association for Chest Surgery
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.440-444, 1996-05-15 (Released:2009-11-11)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

自然気胸症例における術後再発防止の為, 当科では1978年以降, 開胸手術に際し, 壁側胸膜部分切除を併用してきた。1992年以降は自然気胸症例に対し胸腔鏡下手術を第一選択としているが, 胸腔鏡下でも従来の開胸手術と同様に壁側胸膜部分切除が肝要と考え, 全例にこれを併用している.胸腔鏡導入後38例40側の自然気胸症例に対して同手術をした.壁側胸膜部分切除の所要時間は平均で10分, 出血量は術中全体でも20ml以下であり, 術後合併症として特別なものはなかった.また, 再発は40側中1側2.5%に見られたのみであった.したがって, 自然気胸症例に対する胸腔鏡下壁側胸膜部分切除術は容易かつ有用な方法であると思われた.
著者
滝沢 恒世 寺島 雅範 小池 輝明
出版者
The Japanese Association for Chest Surgery
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.7, no.7, pp.764-769, 1993-11-15 (Released:2010-02-22)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

器械縫合の332例と手縫い縫合の500例において気管支に対する器械縫合と手縫い縫合の安全性を比較検討した.気管支瘻発生率は器械縫合332例中8例2.4%, 手縫い縫合500例中6例1.2%であった.一葉切除では器械縫合267例中4例1.5%, Sweet法手縫い縫合253例中1例0.4%, 0verholt法手縫い縫合172例中0例0%の気管支瘻発生率で, 手縫い縫合に比して器械縫合の気管支瘻発生率が高い傾向にあった.一葉切除の器械縫合気管支瘻例では脚高3.5mmのステープルで気管支が強く絞められすぎて損傷している所見が認められた.一葉切除でも気管支壁が厚ければ脚高4.8rnmのステープルを使用した方がよいと考えられた.特に炎症性肥厚のある気管支は器械縫合で損傷がおきやすいので注意を要する.二葉切除では器械縫合40例中3例7.5%, Sweet法手縫い縫合29例中2例6.9%, Overholt法手縫い縫合24例中1例6.4%の気管支瘻発生率であった.肺摘除では器械縫合25例中1例4.1%, Sweet法手縫い縫合12例中2例16.7%, Overholt法手縫い縫合20例中0例0%の気管支瘻発生率であった.Sweet法手縫い縫合は一葉切除, 二葉切除, 肺摘除の順に気管支瘻発生率が高くなった.Sweet法手縫い縫合の気管支瘻例の所見からSweet法縫合は膜様部側に弱点があることが示唆された.肺摘除ではSweet法手縫い縫合より器械縫合の気管支瘻発生率が低かった.今回の対象例では一葉切除, 二葉切除, 肺摘除ともOverholt法手縫い縫合が最も気管支瘻発生率が低かった.
著者
安藤 耕平 前原 孝光 齋藤 志子 青山 徹 足立 広幸 益田 宗孝
出版者
The Japanese Association for Chest Surgery
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 = The journal of the Japanese Association for Chest Surgery (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.367-372, 2011-05-15
被引用文献数
2

原発性自然気胸の再発が予測できるかについて検討するために,初発時に保存的治療を行った218症例を,その後再発した群(74症例)としなかった群(144症例)とに分け,再発に関わる因子について分析した.患者背景は平均年齢24.5歳,男/女199/19症例,対側の気胸の既往あり/なし21/197症例,喫煙歴あり/なし/不明93/75/50症例であった.単変量解析では,25歳未満(再発率42%),女性(63%),対側気胸の既往あり(57%),喫煙歴なし(55%)の症例で有意に再発率が高かった.多変量解析では,喫煙歴がないことのみが独立した再発の予測因子であった(p=0.006,odds比2.410).以上から,非喫煙者の原発性自然気胸は再発率が高いので,初発時でも患者の意向を考慮した上で手術を検討しても良いと考える.また,非喫煙者と喫煙者とでは自然気胸の発生のメカニズムが異なると推測される.