著者
朝日 讓治
出版者
明海大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

研究の最終年度として、これまでの研究経過を点検し、成果のまとめを念頭に、新たに(1)経済開発における非政府部門の役割、(2)寺社や教会などの社会貢献と実態を検討した。(1)経済発展における非政府部門の役割前年に検討した大規模地震の事例に続き、経済開発に必要な援助のあり方を展望した。基本文献はAmartya Senの一連の経済開発の論文である。Senは、飢饉に見舞われた地域の犠牲者への援助として、食糧や物資の提供ではなく、「公的雇用を提供すること」を提言、これにより、「本当にそれを必要としており、雇用機会を喜んで受入れようとする人々を選びだす」ことができるとする。この提言は、状況はまったく異なるが、中越沖地震の復興現場の指揮者の、「援助は、現金がもっともありがたかった」とする意見と共通する。市場メカニズムが働かないと思われている飢饉や災害地における支援のメカニズムとして注目すべき点である。(2)寺社や教会などの社会貢献長い伝統をもつ寺社や教会の中に、信者だけでなく、広く社会連帯を意識し、ホスピス建設促進や生命の尊さを教えるなど、積極的な活動を始めているところがある。このような宗教法人によるソーシャルキャピタルの提供は、新たな動向として、分析に加える必要性を感じた。(3)国際学会での報告:Institute of International Public Finance(IIPF)Warwick Universityで開催された国際学会に出席し、論文を報告し有益なコメントを得た。本研究との関連では、Agnar Sandmoの講演A Broad View of Global Public Goods(2国モデルを用いてグローバルに便益を及ぼす公共財の存在の下での厚生極木条件を導出)が、とりわけ示唆に富むものであった。