著者
朝見 行弘
出版者
Japan Society of Material Cycles and Waste Management
雑誌
廃棄物学会誌 (ISSN:09170855)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.96-103, 1992

1985年7月25日, EC閣僚理事会は, 製造物責任の無過失責任化を定める規定の制定を加盟国に義務づける指令を採択した。そして, このEC指令の採択をきっかけとして, 製造物責任の無過失責任化は, まさに世界的な潮流となったのである。本来, 製造物責任とは, 欠陥製造物の使用によって消費者が被害を被った場合において, その製造者などが被害者に対して負担する賠償責任のことを意味している。しかし, 製造物による消費者の被害は, 製造物の使用にとどまらず, 製造物の廃棄によっても発生するものといわなければならない。すなわち, 製造物責任の問題は, 製造物の使用に伴う消費者の危険のみならず, 製造物の廃棄に伴う消費者の危険に対する賠償責任へと発展する可能性を有しているのである。そこで, 本稿においては, 製造物責任をめぐる無過失責任化の国際的動向を概観するとともに, 製造物の廃棄に伴う製造者の賠償責任のあり方について検討する。