著者
福本 二也 古市 徹 石井 一英 蛯名 由美子 花嶋 正孝
出版者
Japan Society of Material Cycles and Waste Management
雑誌
廃棄物学会論文誌 (ISSN:18831648)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.101-110, 2000-03-31
被引用文献数
1

近年, 最終処分場の建設が, 地下水汚染への不安, 立地選定への疑問, そして事業主体への不信感等を抱く住民の反対により困難になっている。その対策の一環として, 平成9年の法改正により生活環境影響調査および調査結果の住民縦覧が義務づけられた。しかし, 生活環境影響調査だけでは問題の解決にはならず, さらなる情報公開と計画への住民参加が望まれている。本研究では, 中立的な立場において, 地形地質条件に着目した立地選定手法を現実の処分場立地事例に基づき構築し, さらに住民参加を取り込んだ立地選定プロセスのシステム化を行う。さらに別の住民反対が生じた立地選定事例を通じて, 本プロセスの構成方法と有効性を検証した。その結果, 立地選定を行い, 同時に適切な情報公開や説明会等の住民参加を行うことが, 情報公開不足によって生じる住民反対, あるいは住民反対の拡大を予防し, 住民理解の促進に資することを示すことができた。
著者
細見 正明
出版者
Japan Society of Material Cycles and Waste Management
雑誌
廃棄物学会誌 (ISSN:09170855)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.197-209, 2000-05-31
参考文献数
14
被引用文献数
8 3

PCBの製造および輸入の禁止, 開放系での使用禁止, 回収などの措置を受けてからすでに28年が経過した。使用中あるいは保管されているPCBを含む電気機器から環境への放出が懸念されている。一方で, 廃棄物処理法では, 焼却法だけではなく, 脱塩素化分解法と超臨界水酸化分解法がPCB処理法として認められた。<BR>本文では, PCB汚染問題の経緯と化学処理技術の概要をまとめた上で, 今後の課題として, PCB問題をダイオキシンの観点から見直す必要性を示すとともに, PCB汚染物の処理技術として溶媒洗浄法や真空加熱分離法などの実用化に向けて課題を抽出した。
著者
若倉 正英 岡 泰資 三橋 孝太郎 橋本 孝一 泊瀬川 孚 宮川 孝
出版者
Japan Society of Material Cycles and Waste Management
雑誌
廃棄物学会誌 (ISSN:09170855)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.337-343, 1998-05-30
参考文献数
4
被引用文献数
1

一般廃棄物では収集運搬, 処理過程で少なからぬ事故が発生している。一般廃棄物を取り扱う工程での安全を担保するためには, 危険性の実態を把握することが重要である。廃棄物処理管理技術者協議会では厚生省の協力の下に, 平成4年から8年の間に一般廃棄物処理施設で発生した事故に関するアンケート調査を行い興味のある結果を得た。5年間で400件近くの事故が報告され, その中には32名の死亡者と198名の負傷者が含まれ, 被害額1, 000万円以上の物損事故は30件以上発生した。<BR>カセットボンベなどに起因する火災, 爆発事故が多発し大きな施設破壊と時には人身事故を引き起こしていた。また, 施設の老朽化や処理対象廃棄物の増加, 作業マニュアルの整備の不足は種々な労災事故の原因となっていた。さらに, 新規な処理技術の開発や処理対象物質の多様化が進んで, 混触による中毒や異常反応に伴う爆発など, 事故の形態がこれまで以上に複雑化してくる可能性が示唆された。
著者
酒井 浩江
出版者
Japan Society of Material Cycles and Waste Management
雑誌
廃棄物学会誌 (ISSN:09170855)
巻号頁・発行日
vol.10, no.5, pp.357-367, 1999-09-30
被引用文献数
2

家電リサイクル法はわが国の個別リサイクル法としては容器包装リサイクル法に次ぐものと位置づけられる。いずれもその特徴は, 消費者を経て排出された廃棄物の再利用義務を事業者が負うという特徴を持つ。しかしこれらの法律はまた, 発生抑制, 再使用という廃棄物対策としてはプライオリティーにおいて上位に位置すべき施策をその目的に持たないという共通項をも持っている。<BR>このことは, 循環経済社会の構築を標榜しながらもそれには不可欠の上流での対策, つまりは製造者責任, 事業者責任を法的に問わないことを意味する。この聖域を打破しない限り循環経済社会の扉は開かれない。家電リサイクル法は果たしてその扉をたたけるものなのだろうか?
著者
秋山 貴 大迫 政浩 松井 康弘 原科 幸彦
出版者
Japan Society of Material Cycles and Waste Management
雑誌
廃棄物学会論文誌 (ISSN:18831648)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.121-130, 2004-03-31
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

産業廃棄物処理施設は忌避施設と見なされ, その設置をめぐる紛争が多発している。このような特性を有する施設が偏在することは, 環境保護と社会正義の同時達成を目指す「環境的公正」の概念に照らして問題であるとの仮説を基に, 本稿ではその空間的偏在性について定量的に検討した。同時に, 昨今大きな社会問題になっている産業廃棄物の不法投棄についても検討した。分析対象は関東とその周辺の1都8県の最終処分場, 中間処理施設, 不法投棄とし, それらを市町村ごとに集計してその立地や発生の傾向を調べた。分析の結果, 最終処分場, 中間処理施設, 不法投棄のすべてにおいて正の空間的自己相関が存在し, これらが市町村単位で見たとき偏在性があることがわかった。さらに, 最終処分場立地点と不法投棄発生点には空間的分布において類似性が認められることから, 問題構造に共通性が存在する可能性があることが示された。
著者
杉浦 淳吉 野波 寛 広瀬 幸雄
出版者
Japan Society of Material Cycles and Waste Management
雑誌
廃棄物学会論文誌 (ISSN:18831648)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.87-96, 1999-03-31
被引用文献数
7 4

本研究では, ごみを可燃・不燃の2分別でいつでも出せる旧方式から, 資源化を含む26種類に分別し, 月2回の回収日には住民が交代で立ち当番をするという新制度を導入した自治体の事例を取上げた。市内全域に順次導入される一時期において, 制度導入前, 導入直後, 制度導入後1年の3地区について, 各210世帯を対象とする社会調査を実施し, 新しい分別回収制度の社会的利益・個人的コストの個別評価, 新制度の総合評価を比較した。その結果, 新制度の総合評価は, 導入前の地区よりも, 導入からの時間が経過した地区ほど, 肯定的に変化していた。ごみ処理に関する個別評価では, 行政による情報への接触により社会的利益の側面による新制度支持が肯定的に変化した。一方, 制度導入から一定期間が経過することで, 行動実行のコミットメントおよび行動の習慣化により, 社会的利益の側面に加え, 個人的コストの側面からも新制度を支持するように変化した。
著者
北村 喜宣
出版者
Japan Society of Material Cycles and Waste Management
雑誌
廃棄物学会誌 (ISSN:09170855)
巻号頁・発行日
vol.9, no.6, pp.434-443, 1998-09-30
被引用文献数
3 1

1997年に改正された廃棄物処理法は, それまでの産業廃棄物処理に対する不信感を払拭することを, 最大の目的としている。それにあたって, 重要な機能を果たすのが, 情報である。改正法は, 生活環境影響調査書と許可申請書, 処理施設の維持管理記録を利害関係者に公開するように求めた。しかし, これだけでは, 信頼の回復には不十分である。<BR>改正法の対応以外にも, 不信感を緩和する対応は考えられる。列挙すれば, 許可理由の開示, 許可業者に関する情報の提供, 行政指導・行政命令文書の公開, 専門家に関する情報の公開, 立入検査・指導日誌の公開である。これらは, 第一次的には知事が職権ですることが望ましいし, 情報公開条例に基づく開示請求が出された場合でも, 原則として, 全面開示の方向で対応すべきである。
著者
Alicia L. Castillo Suehiro Otoma
出版者
Japan Society of Material Cycles and Waste Management
雑誌
廃棄物資源循環学会研究発表会講演集
巻号頁・発行日
pp.677, 2013 (Released:2014-01-21)

Waste generation in the Philippines has accelerated at a fast pace due to rapid economic and population growth and has contributed to environmental degradation.  The objective of this paper is to review the current municipal Solid Waste Management (SWM) and its challenges in the country, and discuss the possible and innovative ways to manage solid waste issues.  The 3R’s integrated waste management method is the main type of SWM in the country.  Despite the passage of RA 9003 law in 2001, only about 21% and 4% of the Local Government Units (LGUs) in the country are being serviced by municipal recovery facilities and sanitary landfills, respectively.  Moreover, while the LGU of Los Banos was able to successfully address the problem of solid waste through community mobilization and political will of its highest official, SWM in the country could still be considered as not effective or efficient.  Therefore, in order to have an effective SWM in the Philippines, the LGUs should have the political will to innovatively comply with RA 9003, through mobilization of all sectors concerned towards minimizing solid waste and uplifting the economic status of the vulnerable groups involved on SWM.
著者
羽仁 カンタ
出版者
Japan Society of Material Cycles and Waste Management
雑誌
廃棄物学会誌 (ISSN:09170855)
巻号頁・発行日
vol.10, no.6, pp.404-408, 1999-11-30

A SEED JAPAN (ASJ・国際青年環境NGO) の8つの活動体のひとつであるジャパンズトラッシュ (JT) では, 94年から野外で行われるコンサートやフェスティバルなどの音楽イベントに焦点をあて, イベントのごみ削減を初めとする環境対策を実施してきた。実施イベントの多くは商業目的で開催される大規模なもので, 中には7万人もの人々が来場し, 数日間開催されるものもある。94年から98年まで日本テレビ, Tokyo-FM主催の「レゲエ・ジャパンスプラッシュ」, 96年から「Rainbow 2000」, 98年から「Fuji Rock Festival」の環境対策を実施してきた。99年に入り, 年に数回の大規模商業イベントに加え, 2, 000人~5, 000人程度の野外ライブイベント, 屋内で行われた本格的なチャリティーダンスイベント「Earth Dance」, 毎月1回開催されるフリーマーケット「楽市楽座」なども手がけている。<BR>イベントの環境対策を国際青年環境NGOとしての独立した立場から, 主催者と対等な関係で企画, 制作している。イベントの主旨に合わせて, 企画段階からイベント終了後までの環境対策を実践している。
著者
高岡 昌輝 武田 信生 小田 烈弘 藤山 弘道 藤吉 秀昭 森本 林
出版者
Japan Society of Material Cycles and Waste Management
雑誌
廃棄物学会論文誌 (ISSN:18831648)
巻号頁・発行日
vol.9, no.6, pp.256-263, 1998-09-30

平成6年度から平成8年度にわたり行った全国87のごみ焼却施設を対象にした保全整備の実態調査と平成7年度に行った廃炉の実態調査からごみ焼却施設の寿命の推定を試みた。まず, ごみ焼却施設の寿命を表す分布形を決定するため, 廃炉のデータに対して正規分布, 対数正規分布, ワイブル分布の適用を試みた。ワイブル分布の適合度がよく, ごみ焼却施設の寿命は15.7年と推定された。保全整備実態調査の補修のデータについてワイブル分布を適用したところごみ焼却施設全体の寿命は19.2年と, 設備のつながりを考慮した最小寿命系の場合は16.4年と推定された。保全整備費のデータより焼却炉形式, ガス冷却形式の違いによる寿命の比較では, 全連・ストーカ・ボイラーの施設が18.2~37.4年の範囲であることが推定され, 最も長寿命であった。また, ワイブル分布の形状母数からごみ焼却施設はゆるやかな磨耗故障を示す分布で表されることがわかった。
著者
中井 八千代
出版者
Japan Society of Material Cycles and Waste Management
雑誌
廃棄物学会誌 = WASTE MANAGEMENT RESEARCH (ISSN:09170855)
巻号頁・発行日
vol.19, no.5, pp.215-222, 2008-09-30
参考文献数
6

レジ袋は, ごみの全体量からみると多くないが, レジ袋を断ることは, 私たち誰もが今すぐできる, CO<SUB>2</SUB> (1枚62g) とごみの発生抑制であり, 次の環境行動につながる第一歩となる。今やヨーロッパをはじめ, 世界中で無料配布禁止の動きが加速している。<BR>日本でも有効な削減手段として, レジ袋の有料化が全国の自治体・消費者・事業者の協力で取り組まれており, 実施店舗のレジ袋辞退率は80%を超えている (全国平均はまだ17~18%) 。<BR>私たち3R全国ネットが昨年実施した全国1万人アンケートの結果でも, 約80%の人が「レジ袋削減のために有料化に賛成」と答え, 有料化は消費者の共通理解を得ているといえるのではないか。<BR>基本は一人ひとりがレジ袋を断ること。削減の意識は高まっている。あとは, 「行動に移すきっかけを作る」意味でも, 有料化の意義は大きいと考える。<BR>自治体の姿勢と, 消費者の協力体制が問われている。
著者
岡野 多門 安本 幹 安東 重樹
出版者
Japan Society of Material Cycles and Waste Management
雑誌
廃棄物資源循環学会論文誌 = Journal of the Japan Society of Material Cycles and Waste Management (ISSN:18835856)
巻号頁・発行日
vol.21, no.6, pp.226-235, 2010-11-30
参考文献数
27
被引用文献数
7 4

海洋浮遊ごみの多くが陸上から流出しているといわれるがそれを分析的に証明した例はない。ここでは台風が多く襲来した2004年と台風の影響がなかった2008年の鳥取県の海浜ごみを比較し,河川から流出したごみの海浜への影響を検討した。2004年5月から12月までの海浜ごみ数は2008年の約1.7倍であるが,これらの台風は中国・台湾由来物を減らし,由来地域不明物と日本由来物を増加させた。8~9月期の台風の降雨は少なかったが,河川から多くの飲料容器が流出し,河口近傍の海浜に漂着した。河口遠方では砂中に埋没していた小型高比重ごみが高波によって洗い出された。10~11月期の台風は豪雨を伴ったが海浜ごみの総数は8~9月期と同程度であり,河川由来ごみは河口からの流出水によって遠方の海岸まで達した。夏期の少雨台風に比べて秋台風では農薬容器や界面活性剤容器が多く,飲料容器とこれらの放置場所に偏りのあることがわかる。
著者
藤谷 亮一
出版者
Japan Society of Material Cycles and Waste Management
雑誌
廃棄物学会誌 = WASTE MANAGEMENT RESEARCH (ISSN:09170855)
巻号頁・発行日
vol.19, no.5, pp.201-206, 2008-09-30
被引用文献数
1

地球温暖化を防止するためには, 今の生活スタイルを環境にやさしいエコライフスタイルに変えていくことが必要であるが, レジ袋の削減はその大きな第一歩であり, 大切な足がかりとなるものである。<BR>このため, 平成20年5月に神戸で開催された主要8ヵ国環境大臣会合でもレジ袋削減運動を世界に広げる行動計画が合意されるなど, 国内外でレジ袋削減への関心が高まるなか, 富山県では, 今年4月から全国で初めて県内全域でスーパーマーケットなどのレジ袋の無料配布取止め (いわゆる「有料化」) に踏み切り, 4月1ヵ月間のマイバッグ持参率が93%に達するなど, 多くの県民のご理解とご支持が得られている。<BR>さらに, 県ではマイバッグ持参を一過性のものでなく, 県民生活の中でごく当たり前のライフスタイルとして定着させるため, レジ袋削減推進協議会と連携・協力して, 県民総ぐるみの「ノーレジ袋県民大運動」を展開している。
著者
若倉 正英 清水 芳忠 荻原 瑠 三宅 淳巳
出版者
Japan Society of Material Cycles and Waste Management
雑誌
廃棄物学会誌 = WASTE MANAGEMENT RESEARCH (ISSN:09170855)
巻号頁・発行日
vol.18, no.6, pp.382-391, 2007-11-30
参考文献数
9

一般廃棄物処理施設における労働災害の発生状況を, 日本廃棄物処理施設技術管理者協議会が継続的に実施しているアンケート結果に基づいて解析した。廃棄物処理工程での労働災害発生率は全産業平均の7倍以上であり, 安全化の推進は緊急の課題である。廃棄物処理施設別に事故の起因となった設備機器, 作業, 発生原因を, 事故の種類や負傷者の重篤度により分類し, 非定常作業での安全上の問題点, 施設や設備機器ごとの潜在危険性を整理した。また, 労災事故多発の背景にある組織要因や管理運営要因などを明らかにするため, 廃棄物の取り扱いでの典型的な死亡事例について, 根本原因分析を行った。その結果, 廃棄物処理工程では安全の基礎である管理者, 作業者の安全意識の不足が, 事故の根本的な要因であることなどが明らかになった。また, 一般廃棄物処理での労働安全活動が産業廃棄物処理業に比べて, 低調であるなどの問題点も示唆された。
著者
山下 淳
出版者
Japan Society of Material Cycles and Waste Management
雑誌
廃棄物学会誌 (ISSN:09170855)
巻号頁・発行日
vol.9, no.6, pp.444-452, 1998-09-30
参考文献数
59
被引用文献数
1

97年の法律改正により産業廃棄物処理施設の設置許可手続が大きく変化したが, これまで行われてきた自治体ごとの事前手続はなお維持される見込みである。本稿は, 問題の核心が社会的な紛争であるという視点から, 自治体の事前手続における都道府県, 市町村, 住民の役割認識を検討することを通じて, 廃棄物処理法の事業許可手続では処理しきれない利害状況であること, むしろ紛争当事者間の交渉が可能となる枠組みを創り出すべきことを指摘する。
著者
大塚 元一
出版者
Japan Society of Material Cycles and Waste Management
雑誌
廃棄物学会誌 (ISSN:09170855)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.96-105, 2001-03-31
参考文献数
9
被引用文献数
1

昨年, 廃棄物処理法の改正のみならず, 循環型社会形成推進基本法および各種リサイクル法の制定・改正がなされ, 循環型社会に向けて法整備が進められた。廃棄物問題は, 循環型社会という言葉に変えられたと感ずるほどである。産業廃棄物処理業界にとって, 急ピッチの変革は戸惑いでもあるとともに, 見方によってはビジネスチャンスでもある。しかし依然処理業者への偏見, 最終処分場等の危機的状況およびそれに伴う処分すべき廃棄物の適正処理システムの崩壊の恐れ, 静脈産業の市場の病的現象など, 産業廃棄物処理業界にとって乗り越えなければならない課題が山積している。<BR>循環型社会の形成は, 廃棄物問題の新しいスタートである。しかし歴史の上に築かれてきた廃棄物に対する企業および国民の「負」の思いを, 急激に変革することは難しい。産業廃棄物処理業者は, 「負」からスタートしなければならないことを理解していただきたい。
著者
畠山 毅一郎
出版者
Japan Society of Material Cycles and Waste Management
雑誌
廃棄物学会誌 (ISSN:09170855)
巻号頁・発行日
vol.5, no.5, pp.407-417, 1994

1980年に制定された, 有害物質による汚染 (主として土壌汚染) の浄化を規定する法律として世界で最も厳しいといわれる米国のスーパーファンド法は, 1986年の改正を経て現在に至っているが, 浄化にあたりその基金を使用する権限が1994年9月30日をもって切れる。<BR>同法は過去に汚染されたサイトの浄化を主たる目的としているため, 浄化責任分担に関する訴訟が多発し, 浄化関連費用の高騰の大きな一因となっている。さらには, 浄化プロセスが複雑であることや, 浄化基準が暖昧であることなどから, 莫大な費用が掛けられているにも関わらず, 同法の成果はほとんど挙がっていない。こうした状況を受けて, 1994年2月にクリントン政権がその改正法案を議会に提出した。<BR>本稿では, スーパーファンド法の概要を簡単に解説し, これまでの浄化実績などをもとに効率が上がらない背景を説明する。また, 同法の政府改正法案原案の概略を紹介する。<BR>*なお, 上記法案は, 本稿校正中の1994年10月8日の第103議会閉会をもって廃案となった。11月8日の米国中間選挙で共和党が勝ったことにより, スーパーファンド法改正の今後の動向が注目される。ただ, 現時点でスーパーファンド法改正に対する米国環境保護庁 (EPA) の基本的姿勢を知っておくことは重要であると考える。