著者
加藤 照之 木下 正生 一色 浩 寺田 幸博 神崎 政之 柿本 英司
出版者
東京大学
雑誌
地域連携推進研究費
巻号頁・発行日
1999

本研究は,海面に浮かべたブイいGPSを搭載して陸上基地局との間でRTK解析を実施することにより海面高の実時間監視を実現し,襲来する津波を沿岸への到達前に検出して津波防災に役立てるシステムを構築しようとするところに究極の目的がある.このために過去に実施してきた基礎実験をうけ,本研究課題においては大船渡市と連携して,同市沖にGPS津波計を敷設し,1年間の長期実験を実施したものである.平成11年度に開始された本研究では,同年度中にシステムの設計を行い,平成12年度にGPSブイ及び周辺システムを製作・構築し,平成13年1月23日に大船渡市長崎地区沖に敷設して実験を開始した.陸上基地局はブイから約1.6km離れた場所に設置した.特小無線によってデータをブイからリアルタイム伝送し,基地局におかれた小型計算機でRTK処理を施すと共に,計算結果は専用電話回線によって大船渡市役所と同市消防署に伝送されて実時間監視に役立てられた.初期不良や時折の観測・解析の中断はあるものの,1年を経た現在でもほぼ順調に稼動している.実験の途中の平成13年6月25日未明には前日のペルー沖で発生した地震津波をとらえるのに成功した.このときの振幅は10-20cmであった.本実験によって「GPS津波計」がほぼ当初の目的とした1cm程度での検出が可能であることを実証した.また,解析データを準リアルタイムにホームページ上で公開することにより誰でもどこでも気軽に海面の様子を知ることが可能となった.なお,今後実用化に向けてはいくつかの課題を解決すべきであることも明らかとなった.例えば,より沖合いに展開するために10km超の長距離RTKで1cm程度の精度を達成すること,水深の深いところでのブイの安定作動と長距離データ伝送,津波の自動判別アルゴリズムの開発などである.今後こうした課題を解決して真に防災に役立つシステムを完成させたいと考えている.