著者
川崎 一朗 加藤 照之
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.11-22, 2016-07-10 (Released:2016-11-10)
参考文献数
40

The way to have another look at earthquake prediction/forecast researches in Japan is discussed from a border between the seismology and the history and philosophy of science. Scientific revolution is often symbolically expressed as the shift of the paradigm, idea of which was introduced by Thomas Kuhn. In the field of earthquake prediction research, here we tentatively define its paradigm as a combination of the following ideas - though these would be too humble :1) plate tectonics, 2) asperity or distribution of frictional strength on a fault surface, 3) constitutive law of friction, 4) numerical simulations of precursory process, and 5) observation system of crustal deformation prior to a large earthquake. The case for the paradigm is that any of convincing precursors to a large earthquake has not been observed yet, and, the distribution of frictional strength on a fault surface, in particular, on the subducting plate boundary, is not precisely estimated. Our history of modern seismology is too short to resolve such observational problems. Given that essence of the progress in science is the repetition of proposal of hypotheses and its verification or its rejection, scientists are strongly obliged to propose new hypotheses based on new findings and discoveries to be tested and discussed. Even if the result does not occur along prediction/forecast, it should be appreciated as the science if their scientific context is acceptable. Progressive theory that prevails over degressive one, in the meaning of “research program” theorem proposed by Lakatos Imre, will stimulate the earthquake prediction research in Japan, for which the authors truly believe in. Individual researchers working on the prediction/forecast researches are responsible only for their scientific context. Administrative organizations of seismologists such as the Headquarters for Earthquake Research Promotion and the Coordinating Committee for Earthquake Prediction should take a responsibility for our society.
著者
飯尾 能久 松澤 暢 吉田 真吾 加藤 照之 平田 直
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.213-229, 2003-09-16 (Released:2010-03-11)
参考文献数
97
被引用文献数
1

We review recent studies on spatial distribution of asperities, and space-time variations of aseismic slips deduced from analyses of strong ground motions, displacement rates, continuous crustal deformations, and repeated microearthquakes in the Sanriku-oki region along the Japan trench. These various analyses suggest a possible scenario about occurrence of large earthquakes; asperities, which are defined as areas of large slips at earthquakes, repeatedly break when the stresses at asperities are loaded and reach to their strengths by aseismic slips occurring in the surrounding regions. If this scenario is the case and we estimate the strength, extent of asperities, and space-time variations of aseismic slips around the asperities, we will be able to forecast occurrence of large earthquakes to some extent. Moreover, we will be able to simulate the whole subduction process including seismic cycles along a subducting plate boundary if we find a conclusive constitutive law of frictional slip and succeed in estimating detailed distribution of the frictional parameters on the plate boundary. Although loading and generation mechanisms of intraplate earthquakes might not be the same as the interplate ones, the slow slips along the fault surface must play an important role for their generation.
著者
笠原 稔 宮町 宏樹 日置 幸介 中川 光弘 勝俣 啓 高橋 浩晃 中尾 茂 木股 文昭 加藤 照之
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

ユーラシアプレートと北米プレートの衝突帯には、2つの巨大プレートとは独自の変動をするオホーツクプレートとアムールプレートの存在が提案されてきた。そこで、実際の観測の手薄な場所でもあったこの地域での境界域テクトニクスを検討するために、想定アムールプレート内のGPS観測により確認することと、この地域での地震観測の充実を意図して、この研究計画は進められた。1995年以来進めてきた日口科学技術協力の一環として、この地域での共同研究の推進に関するロシア科学アカデミーと日本側大学連合との合意を元に、2002年から2004年の計画で、GPSの可能な限りの多点化と連続観測を主として極東ロシアでの観測を進めてきた。また、地震観測は、サハリン島の衝突境界としての特徴を明らかにするために、南サハリン地域での高感度高密度観測を推進してきた。結果として、アムールプレートの動きは想定していたほど単純なものではなく、計画の3年間では結論付けられなかったが、その後の日口での観測継続の結果、サハリンでの短縮はかなり明瞭ながら、その原因をアムールプレートの東進とするには、まだ難しいということになっている。今後、ロシア側の観測網の充実が図られつつあり、その解決も時間の問題であろう。一方、サハリンを含む、日本海東縁部に相当する、2つのプレートの衝突帯と想定される場所での地震活動は高く、2000年8月のウグレゴルスク南方地震の後も、中越地震、留萌支庁南部地震、能登半島沖地震、そしてネベリスク地震、と引き続き、これらの地震発生帯が、2つのプレートの衝突境界域であることを示していると思われる。また、南サハリンでは、高感度高密度地震観測が続けられ、明瞭な南北延長の地震活動帯が認識できるようになってきた。これらは、北海道の地震活動帯の延長と考えられ、今後より一層、衝突帯のテクトニクスを考える上でのデータを提供できたものと評価できる。
著者
加藤 照之
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009-04-01

高頻度でサンプリングしたGPSデータの地震計への応用可能性を目的してシミュレーションと観測の両面から研究を行った.シミュレータを用いた検証を行った結果,数Hz程度よりも高い周波数の地面振動を受信する際には位相,振幅に有意なずれが生じることが明らかとなった.一方,実際の観測でどのような波形が取得できるかについて,3台のGPS受信機を用いた観測を実施した.いわき,鹿嶋,静岡の3か所に受信機を設置し,50Hzでの観測を実施した.この結果2013年9月20日に福島県浜通りで発生した震度5強の地震による振動波形を取得することにはじめて成功した.
著者
松本 滋夫 平田 安廣 加藤 照之 渡辺 茂
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大学地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.239-248, 1985-11-08

1984年9月14日に発生した長野県西部地震による阿寺断層上の水平地殻変動を解明するため,同地震発生直後に阿寺断層地域の既設基線網において光波測量を実施した.今回の再測では,前回(1983年11月)にくらべて全般に基線長の縮みが認められた.大きいところでは2cmに達する縮みが認められ,これは測量誤差をやや上回る,有意なものと思われる.一方,断層モデルを設定し,各基線網か受けるべき歪変化を計算し,測量の結果と比較したところ,歪量はどちらも10-6程度で調和的である.また,両者は方向・大きさともかなり良い対応が認められた.ただし,面積歪に関しては必ずしも良く調和しているとはいえずさらに検討を要するものと思われる.
著者
村田 一郎 加藤 照之 柳沢 道夫 長沢 工 土屋 淳 石井 紘
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1986

1.受信機の改良国産のGPS相対測位用受信機の開発が本研究の目的の一点であった。L1単波受信機としては、すでに昨年度完成していたが、測定精度向上のため、L1、L2の2波受信が可能となるよう改良を施した。L2波搬送波再生方式として、Pコード解読形を採用したので、好S/N比が得られた。この受信方式を採用した機種は米国に1機種あるだけで、特色ある国産受信機が製作されたことになる。ただし、受信チャンネルが8本と限定されたため、同時受信可能衛星数は4個ということになった。完成は今年度秋期であったが、データ解析処理ソフトウェアが未だ途中段階であること、さらに、GPS事情の激変のため、労力を外国製受信機の対応に取られ、現在までのところ、本確的な運用までには至らず、文京区地震研究所と三鷹国立天文台との間で試験観測を続けている。2.試作受信機による観測三浦・房総両半島を結ぶ基線網において、1987年06月と88年02月の2回試験観測を実行した。6月の観測については、昨年度報告済みであるが、2月の観測については、データ処理に時間的な余裕がなく、報告できなかったので、ここに結果の一部を記しておく。下表は基線長を前回の結果と比較したもので、10kmの距離を1cmの精度で計測するという研究当初の目的の一つを達成したものと判断できる。基 線 基線長(m) 前回との差(cm)間口ー野比 7813 2.9 1.0野比ー鋸山 12154 -1.2鋸山ー間口 13730 1.2また、対国立天文台基線(20km)を使い、外国製GPS受信機と並行観測を継続中で、この結果も含めた総合研究報告を現在作成中である。
著者
加藤 照之 松島 健 田部井 隆雄 中田 節也 小竹 美子 宮崎 真一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

北マリアナ諸島のテクトニックな運動を明らかにするためのGPS観測と2003年5月に噴火活動を開始したアナタハン島の地質学的な調査を実施した.GPS観測は2003年1月,同年7月及び2004年5-6月に実施,以前の観測データとあわせて解析を実施した.今回は,1回のみ観測が実施されていた北方の3島を中心とした観測を実施した.西マリアナ海盆の背弧拡大の影響が明瞭に見て取れるものの,北方3島については,繰り返し観測の期間が短いせいか,必ずしも明瞭な背弧拡大の影響は見られない.アナタハン島噴火の調査は2003年7月及び2004年1月に実施した.2003年7月の調査では,噴火はプリーニ式噴火から水蒸気爆発に移行し,一旦形成された溶岩ドームが破壊されたことが分かった.2004年1月調査で計測した噴火口は,直径400m,深さ約80mであり,火口底には周囲から流れ込んだ土砂が厚く堆積し,間欠泉状に土砂放出が起きていた.2003年7月には最高摂氏300度であった火口の温度が2004年1月には約150度と減少し高温域も縮小した.カルデラ縁や外斜面には水蒸気爆発堆積物が厚く一面に堆積しているものの,大規模噴火を示す軽石流堆積物層等は認められない.このため,アナタハン島の山頂カルデラの成因は地下あるいは海底へのマグマ移動であると推定される.この噴火についての地殻変動を調査するためにGPS観測を強化することとなった.火口の西北西約7kmに位置する観測点では,連続観測を開始したほか,2004年1月には島の北東部に新たな連続観測点を設置して観測を行っている.2003年1月と7月の観測データの比較では,水平成分がほとんど変化せず沈降約21cmが観測された.観測された地殻変動は主に噴火によるマグマ移動によって引き起こされたと考えられ,マグマ溜まりが噴火口の直下よりも島の西端にある可能性を示している.
著者
加藤 照之 木下 正生 一色 浩 寺田 幸博 神崎 政之 柿本 英司
出版者
東京大学
雑誌
地域連携推進研究費
巻号頁・発行日
1999

本研究は,海面に浮かべたブイいGPSを搭載して陸上基地局との間でRTK解析を実施することにより海面高の実時間監視を実現し,襲来する津波を沿岸への到達前に検出して津波防災に役立てるシステムを構築しようとするところに究極の目的がある.このために過去に実施してきた基礎実験をうけ,本研究課題においては大船渡市と連携して,同市沖にGPS津波計を敷設し,1年間の長期実験を実施したものである.平成11年度に開始された本研究では,同年度中にシステムの設計を行い,平成12年度にGPSブイ及び周辺システムを製作・構築し,平成13年1月23日に大船渡市長崎地区沖に敷設して実験を開始した.陸上基地局はブイから約1.6km離れた場所に設置した.特小無線によってデータをブイからリアルタイム伝送し,基地局におかれた小型計算機でRTK処理を施すと共に,計算結果は専用電話回線によって大船渡市役所と同市消防署に伝送されて実時間監視に役立てられた.初期不良や時折の観測・解析の中断はあるものの,1年を経た現在でもほぼ順調に稼動している.実験の途中の平成13年6月25日未明には前日のペルー沖で発生した地震津波をとらえるのに成功した.このときの振幅は10-20cmであった.本実験によって「GPS津波計」がほぼ当初の目的とした1cm程度での検出が可能であることを実証した.また,解析データを準リアルタイムにホームページ上で公開することにより誰でもどこでも気軽に海面の様子を知ることが可能となった.なお,今後実用化に向けてはいくつかの課題を解決すべきであることも明らかとなった.例えば,より沖合いに展開するために10km超の長距離RTKで1cm程度の精度を達成すること,水深の深いところでのブイの安定作動と長距離データ伝送,津波の自動判別アルゴリズムの開発などである.今後こうした課題を解決して真に防災に役立つシステムを完成させたいと考えている.
著者
加藤 照之 CATAPANG Her KOSHIBA Frit PARK PilーHo FEIR Remato GERASIMENKO ミハエル BEAVAN John 小竹 美子 平原 和郎 中尾 茂 笠原 稔 GERASIMENKO Michael D HERBERT Cata FRITZ Koshib PILーHO Park RENATO.B. Fe MICHAEL Gera JOHN Beavam FEIR B. Ren
出版者
東京大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

西太平洋地域は収束するプレート境界が複雑に入り組み、多くの海盆やトラフがあって地震や火山噴火の活動の盛んな地域である。この地域のプレート運動とその境界の非剛体的変形を検出して監視することにより各種の地殻活動の予測に役立てられると同時にプレート運動の機構がより詳しく明らかにされると期待される。最近のGPSによる基線解析では1000kmを1cmの精度で計測することが可能である。そこで本研究では、これまでの日米科学協力事業等による基礎調査をふまえて西太平洋地域にGPS連続観測網を構築した短期間の観測研究により当該地域の変位場を明らかにすることを目的とした。本研究では、IGS(国際GPSサービス機構)のグローバル観測網の手薄な地域に観測点を建設して資料を蓄積すると同時にIGSによるデータを取り込みながら得られたデータを解析して観測点の速度ベクトルを算出するという観測と解析を並行して実施するという方式をとった。平成7年度には気象研究所と共同で南鳥島に連続観測点を建設したのを手始めに、トラック島、マニラ、大田、ウラジオストックに観測点を建設しいずれも現地収録方式により観測を開始した。また、平成8年度にはポートモレスビ-に観測点を建設した。これにより、別途設置した石垣島とパラオとを合わせ8点のGPS連続観測点を建設し、IGSの他の観測点と合わせ西太平洋に1000kmスケールのGPS連続観測網を建設することができた。この観測網から取得できた1995年7月からのデータを用いて基線解析を実施しつつある。ここでは最高精度による基線解析を実施するため新たにfiducial freeによる解析方法を考案した。この方法ではIGSグローバルサイトの観測点を取り込み、観測網全体がバイアスを持たないようにしたうえ、どの観測点も固定しないで解くという方法を用いる。ソフトウェアはBernese software Ver.4.0を用い、IGS精密暦を使って解析を実施した。こようにすると、座標の絶対値は正確には求められないが、基線は正確に求められる。このようにして基線を求めた上でHeki(1996)によるつくば(TSKB)の速度を与えて固定し、全観測点の位置座標を決定する。このような解析を毎日のデータについて実施し、各観測点の時系列を得た上で直線近似によって速度ベクトルを求める。求めた速度ベクトルをマップにまとめたところいくつかの新しい事実が判明しつつある。1)マニラの観測点は北西に約4cm/yrの速度で移動しつつあり、フィリピン海プレートによる圧縮の影響が顕著である。2)石垣の観測点は南南東へ約6cm/yrで移動しつつあり、フィリピン海プレートが押している影響は見られない。このプレート境界はむしろカップリングは弱く、背孤である沖縄トラフが拡大しつつあるのを見ているものと考えられる。3)グアムはフィリピン海プレートないにあるにも関わらず、その変位速度は剛体的変位から考えると速度が小さすぎる。マリアナトラフの拡大の影響を受けているものと考えられる。4)大田、上海、イルク-ツク等の東アジアの観測点はすべてヨーロッパに対して東向きの変位を持ち、インドプレートの北方への衝突による大陸地殻の東への押し出しの影響を見ているものと考えられる。以上を要するに、本研究によって西太平洋地域にはじめてGPSの連続観測網が構築され、テクトニクス研究の基礎を築くことができたと同時に、日本の南西諸島,フィリピン,マリアナ諸島などにおいて従来の剛体的プレートモデルでは説明できないようなプレート境界部における非剛体的変位が明らかになりつつある。このことをふまえ、今後もこの地域にGPS観測点を増強すると共にその観測領域を東アジアに拡げ,当該地域のテクトニクスを明らかにすべく観測研究を強化する予定である。また、本観測網は「海半球ネットワークプロジェクト」(新プログラム:研究代表者 深尾良夫)に引き継がれ、引き続き観測を続行する予定である。