著者
後安 美紀 辻田 勝吉 石川 卓磨 高嶋 晋一 木原 進 岡﨑 乾二郎
出版者
日本生態心理学会
雑誌
生態心理学研究 (ISSN:13490443)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.33-47, 2015-04-01 (Released:2021-01-27)
参考文献数
34

本研究の目的は,包囲空間 (ambient space) という概念に焦点をあて,包囲空間に関する生態学的な研究法やその枠組みについて考察し,遮蔽縁が包囲空間の奥行きを創り出すという理論的な提案をおこなうことである.本理論を実証するための最初のステップとして,これまでに開催した美術館でのワークショップのなかから,絵画における包囲空間表現に関わる事例を取り上げ,絵画模写課題での参加者の振る舞い方について重点的に観察した.その結果,図と地の反転知覚が想定する論理枠組みの次元を上げ,“地と地の交替”という知覚の在り方が存在することが示唆された.図と地の問題系では,図を見ているときは,地は見えないとされてきたが,そのようなことは全くないどころか,焦点が結ばれることのない“地と地の交替”がなされる界面,すなわち遮蔽縁において奥行き知覚すら生じさせることができる,という可能性を示すことができたと考えられる.