- 著者
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木島 彩
梅川 奈央
吉田 優
大澤 朗
- 出版者
- 公益財団法人 日本ビフィズス菌センター
- 雑誌
- 腸内細菌学雑誌 (ISSN:13430882)
- 巻号頁・発行日
- vol.24, no.4, pp.293-302, 2010 (Released:2010-11-25)
- 参考文献数
- 30
- 被引用文献数
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1
偏性嫌気性グラム陽性桿菌であるビフィズス菌は,新生児腸内細菌叢において圧倒的多数を占める.その由来として,母親からの「垂直伝播」が示唆されているが,実際に母親由来ビフィズス菌が子の腸内に伝播しているという直接的な知見は未だ報告されていない.そこで,ビフィズス菌の母親から新生児への菌株レベルでの伝播をパルスフィールドゲル電気泳動(Pulsed-Field Gel Electrophoresis; PFGE)法によって検証した.その結果,5組の母子双方の糞便から Bifidobacterium longum subsp. longum(B. longum)が分離され,このうち3組の母親由来株と新生児由来株のPFGEパターンが組ごとに一致した.次に,これら母親由来株の好気及び微好気条件下での生残性を調べた.その結果,1)培地平板上では好気条件下で6時間,微好気条件下で18時間は初発の菌数を維持すること,2)ヒトの手のひら上では生残数が急速に減少し,3時間で全ての菌が死滅すること,3)好気環境でも乾燥状態では全ての菌が死滅するまでに24時間以上かかることが明らかとなった.これらの結果から,ビフィズス菌は母親の手指よりも産道や大気,器具,衣類等を介して垂直伝播することが示唆された.