著者
木村 万里子
出版者
くらしき作陽大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究課題では、未利用海産藻類糖タンパク質に結合するアスパラギン結合型糖鎖の化学構造を明らかにするとともに、免疫活性等の生理活性についての解析を行った。まず、褐藻類、緑藻類および紅藻類をミキサーで破砕後、ペプシン消化を行い、その消化物からゲルろ過とイオン交換により糖ペプチドを調製した。糖鎖をヒドラジン分解によりペプチドから遊離させ、還元末端を蛍光標識した後に高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって各々の化学構造を決定した。その結果、未利用海藻からは動植物に普遍的に存在するハイマンノース型糖鎖が多量に見出されたものの、陸生植物に特徴的なキシロース・フコース含有の糖鎖の存在は認められなかった。その一方、動植物由来の糖タンパク質糖鎖に対して作用する糖質分解酵素群に抵抗性を示す糖鎖の存在が示唆された。更に、ホンダワラから調製した糖ペプチド画分がヒト単球を活性化することが認められた。
著者
林 慎一 木村 万里子
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.68-73, 2015 (Released:2015-09-02)
参考文献数
27

エストロゲン受容体(ER)陽性乳癌ではホルモン療法が有効であるものの,およそ3分の1は再発する。再発のメカニズムは数多く研究されてきたが,完全に解明されたわけではなく,ホルモン療法耐性,特にアロマターゼ阻害剤(AI)耐性は代替的な細胞内ERシグナルの獲得が関係すると考えられている。筆者らは癌組織検体と癌細胞株でERの転写活性をモニタリングすることでそのメカニズムを研究してきた。エストロゲン応答配列(ERE-)GFPアデノウィルス試験ではAI無効例は多様なER活性を示し,抗エストロゲン剤への感受性も様々であったが,これは耐性には複数の機序が存在することを示唆している。また,ERE-GFP導入ER陽性乳癌細胞株からAI耐性を模倣する6種類の異なるタイプの耐性株を樹立し,リン酸化依存性やアンドロゲン代謝物依存性など,複数の代替的なER活性化経路がAI耐性に関わることを明らかにした。フルベストラントやmTOR阻害剤への反応も個々の耐性株で異なっていた。これらの結果はER陽性乳癌の分類をさらに細分化することが,ホルモン療法だけでなく新しい分子標的薬などの治療選択に極めて重要であることを示唆している。