著者
安達 修二 木村 幸敬
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

水溶性めビタミンC(アスコルビン酸)は,体内における吸収効率が低い.一方,炭素数6〜12の飽和脂肪酸である中鎖脂肪酸は腸管などの上皮での親水性物質の吸収を促進することが知られている.そこで,アスコルビン酸を中鎖脂肪酸によりアシル化することにより,その腸管吸収効率の向上を図るとともに,還元能を有するアスコルビン酸に疎水性を付与することによる脂溶性還元剤としての利用,並びに生成物が界面活性をもつと期待されることより還元能を具備した乳化剤(界面活性剤)としての使用を意図して本研究を行った.まず,Candida antarctica起源の固定化リパーゼがアセトニトリル中でラウリル酸とアスコルビン酸の縮合反応を効率的に触媒し,溶媒の含水率が低いほど収率が向上することを見出した.また,各種炭素鎖長の中鎖脂肪酸との縮合反応の平衡収率について検討したところ,脂肪酸の炭素鎖長は平衡収率に顕著な影響を及ぼさなかった.さらに,食品への応用を念頭において各種水可溶性有機溶媒を対象に反応溶媒の選択を行い,沸点が低く,精製過程での除去が容易と考えられるアセトン中でも本反応が効率的に進行することを見出した.また,アセトンの含水率が低いほど目的生成物の平衡収率が高かった.さらに,中鎖脂肪酸による親水性物質の腸管吸収機構などに関して小腸上皮様に分化したCaco-2培養細胞を用いた検討を行い,吸収促進効果には中鎖脂肪酸の界面活性剤としての性質が深く関与していることを示した.一方,リパーゼ触媒反応により調製したアスコルビン酸のアシル化物は比較的強い界面活性能を有していた.上述のように,酵素法を用いて中鎖脂肪酸によりビタミンCをアシル化する方法を確立するとともに,ビタミンCの腸管吸収効率の改善に関する基礎的な知見が得られ,所期の目的をほぼ達成した.