著者
長澤 哲郎 木村 育美 阿部 裕一 岡 明
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.295-298, 2006-07-01 (Released:2011-12-15)
参考文献数
12

ヒトヘルペスウイルス6型 (HHV-6) による脳炎・脳症のうち, 解熱・発疹期に短時間のけいれんが群発する症例の報告が散見される. 今回,この「けいれん群発型HHV-6脳症」において,急性期にsingle photon emission computed tomography (SPECT) にて患側の脳血流量増加が示された.これまで, けいれん群発型HHV-6脳症におけるSPECTでは全例で脳血流量の低下が報告されているが, いずれも慢性期に測定されていた. 本症例では,けいれん群発当日に患側大脳半球で血流量増加が認められた. けいれん群発型HHV-6脳症は予後不良例も報告されており, 今回はじめて血流量増加が確認されたことは, この脳症の病態解明と治療を検討する上で意義があると考えられた.
著者
久保田 雅也 木村 育美
出版者
一般社団法人 日本臨床神経生理学会
雑誌
臨床神経生理学 (ISSN:13457101)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.124-131, 2018-06-01 (Released:2018-06-01)
参考文献数
23
被引用文献数
1

ヒトの顔, 表情は豊富な意味を内包し, (1) 個体の識別と存在の象徴であり, (2) 感情の表出の場としても機能し, (3) 社会的交通の窓口でもある。アスペルガー症候群 (AS) の顔認知に関しては相対的に顔の同定・記憶・表情判断力において劣ること, 特に「眼」の表情のよみとり障害が顕著であることが知られる。また, 6歳以降の小児で顕著になる倒立顔効果が, 自閉症児では乏しいこと等が知られている。これはASの認知特性としての全体よりも細部にこだわるweak central coherence (弱い中央統合性) 仮説で説明される。今回顔認知課題を脳波–脳磁図測定およびアイトラッキングを用いて解析し, ASでは定型発達の「顔認知に特化されたシステム」とは異なる領域を用いていた。すなわちAS小児は顔という豊富な意味を有する対象を同定・理解するのにholistic & configural processingを経ずに視覚認知における背側経路を主に用いて分析的に見ることで表情認知という論理的分析にはなじまない対象を了解しようとしている可能性がある。