著者
アニンディティヨ パトモノアジ ムハンマド ナシル ムハンマド アジス マハルディカ 雲 佘 末包 哲也
出版者
一般社団法人 資源・素材学会
雑誌
Journal of MMIJ (ISSN:18816118)
巻号頁・発行日
vol.137, no.9, pp.91-97, 2021-09-30 (Released:2021-09-30)
参考文献数
23
被引用文献数
2

多孔質内にトラップされているガスの流動している水相への溶解は二酸化炭素地下貯留(GCS)などの様々な水理学的分野において重要な過程である。GCS では,CO2 の溶解により,貯留層圧力変化や浮力によるリークリスクの低減につながるため溶解速度は安全性評価において重要な観点になる。本研究ではCO2, O2, N2, と Ar の4種のガスの多孔質中での溶解プロセスの違いを比較検討した。CO2 は他のガスに比べて極めて特徴的な溶解挙動を示すことを見出した。CO2 は他のガスに比べて溶解度が一桁程度大きいため,初期の溶解が非常に速く,トラップされたCO2 気 泡の周りに飽和水の膜が形成される。この飽和膜の存在がCO2 の物質輸送係数を低下させていると考えられる。
著者
張 春偉 高 謙 胡 映学 袁 正一 末包 哲也 肖 鋒
出版者
一般社団法人 資源・素材学会
雑誌
Journal of MMIJ (ISSN:18816118)
巻号頁・発行日
vol.137, no.5, pp.56-62, 2021-05-31 (Released:2021-05-27)
参考文献数
30

多孔質中の非混和二相流に関する現象はCO2地下貯留や原油増進回収,土壌修復など様々な工業的,自然科学的応用を有している。ハイネスジャンプや毛管圧浸透などの空隙スケールの現象は置換プロセスに大きな影響を与えることが知られている。ハイネスジャンプは周囲の空隙内におけるメニスカスの再配置を伴いながら二相界面が急激に移動する現象である。対して,毛管圧浸透は濡れにくい相が大きな空隙を平坦な界面を維持しながら選択的に浸透する現象である。本研究では,様々なスロート径を有するランダムな構造を有する多孔質における排水過程の数値シミュレーションを行った。ハイネスジャンプと毛管圧浸透は飽和率の変化に影響を与える。ハイネスジャンプでは飽和率が変わらず先端界面の移動が生じる。一方,毛管圧浸透では先端位置がほとんど変化せず,飽和率の上昇が発生する。さらに,キャピラリー数と粘性比の影響を調べた。高いキャピラリー数と高い粘性比が,CO2などの濡れにくい相のキャピラリートラップには有効である。エネルギー収支を求めた結果,外からなされた仕事の48%がこれらの不可逆過程で散逸していることが分かった。