著者
末松 綾子 高柳 広
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.22-28, 2007 (Released:2007-03-02)
参考文献数
29
被引用文献数
1 2

骨格系と免疫系は,サイトカイン,シグナル分子,転写因子や膜受容体などの多くの制御分子を共有し,非常に密接な関係にある.関節リウマチ(RA)における炎症性骨破壊研究の発展が,両者の融合領域である骨免疫学に光をあてた.その後,種々の免疫制御分子の遺伝子改変マウスに骨異常が見い出され,骨免疫学の重要性が浮き彫りとなった.骨と免疫系をつなぐことになった最も重要な分子である破骨細胞分化因子(RANKL)は,破骨細胞分化を制御する中心的なサイトカインである.骨免疫学はRANKLを中心とした研究からRA骨破壊のメカニズムの解明や骨免疫疾患の新しい治療戦略にますます重要になっている.ここでは,免疫系と骨軟骨細胞のクロストークについて概説し,T細胞が産生する制御因子による破骨細胞分化制御,破骨細胞分化マスター転写因子NFATc1の同定,免疫グロブリン様受容体群を介したRANKL共刺激の発見やカルモジュリンキナーゼ(CaMK)による破骨細胞分化および機能の制御などの最新の知見を紹介する.