著者
末綱 邦男
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.7-14, 1990

Streptomyces californicusの液体培養によって生産された赤色色素を単離精製し,機器分析 (UV,IR,MS, NMR)によりその構造解析を試みた結果,ジデオキシグリセオロジンCと同定した.また,ジデオキシグリセオロジンCはペプチドとの複合体を形成することによりその水溶液は美麗な赤色を呈するので,天然食用色素としての可能性を検討した.基礎的検討の結果,色素-ペプチド複合体水溶液の色調はpH3~5では赤色から赤橙色を呈して, pH6~9では赤橙色から赤紫色を呈した.また,熱に対しては非常に安定であるが,紫外線に対する耐光性は劣った.安全性については初期試験の段階であるが,その急性毒性値はきわめて低く,また突然変異誘発性も有しないと推定された.今後各種食品への利用適性などの応用研究を進め,さらに安全性面での保証が十分得られるならば食用色素としての開発が可能と考えられる.本研究において,終始御指導を賜わりました名古屋大学化学測定器センター近藤忠雄博士, UBE科学分析センター(株)斎藤啓治氏に深く感謝いたします.