著者
本多 典広 寺田 隆哉 南條 卓也 石井 克典 粟津 邦男
出版者
特定非営利活動法人 日本レーザー医学会
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.115-121, 2010-07-30 (Released:2010-11-14)
参考文献数
21

光線力学療法(PDT)の治療計画において,生体組織内の光の侵達度や照射線量分布を定量的に把握することは,治療成績を向上させるために重要である.生体組織内の光の侵達度は,生体組織の光学特性である吸収係数 [mm-1],換算散乱係数 [mm-1]等により理解できる.一般的に,レーザー照射により生体組織の光学特性は変化する.そこで,我々は,PDT前後の腫瘍組織の光学特性を算出することを目的として基礎的検討を行った.Talaporfin Sodiumを用いたPDTをマウス皮下腫瘍モデルに対して行い,双積分球光学系とInverse Monte Carlo法を用いて波長350~1000nmにおける腫瘍組織の光学特性を算出した.PDT実施7日後,Talaporfin Sodiumの吸収極大波長664nmにおいて,換算散乱係数はPDT前に比べて0.64mm-1から1.24mm-1に増加し,結果,腫瘍組織への光の侵達度はPDT前に比べおよそ44%減少することが見積もられた.以上より,追加のレーザー照射によるPDTの際,PDT後の光の侵達度の減少を考慮し,レーザー照射条件を調整することが必要であることが示唆された.