著者
本田 信治
出版者
福井大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

私たちはモデル生物のアカパンカビを用いて、ヘテロクロマチン領域が異常に拡がるのを防ぐ複合体 (DMM-1/DMM-2)を同定し、この分子機構を発表した (Honda et al. Genes Dev. 2010)。今回、DMM-2と相互作用する候補蛋白質としてDMM-3を同定した。本研究では、この新規蛋白質DMM-3とヘテロクロマチン境界制御の関係を明らかにするために、当初の計画に沿った研究を行い、以下の成果を得た。1) アカパンカビKOプロジェクトでは、DMM-3の部分欠損株の作製しか遂行できなかった。そこで私たちは、ノックダウン法によりDMM-3遺伝子発現を抑制させた株、DMM-3が有し、種間で保存されたドメインに変異を入れた機能抑制株、更に独自にDMM-3の完全欠損株の作製を行い、これらすべてを成功させた。2) 上記で作製したDMM-3欠損株は極度の成長阻害を持つ。この欠損株にC末端にFLAGタグを付加したDMM-3遺伝子(DMM-3-FLAG)を導入すると、成長が元に戻った。この結果、成長阻害はDMM-3の欠損によって引き起こされること、そしてDMM-3-FLAGは正常な機能を持つことが明らかになった。3) DMM-3-FLAGを発現する株を用いて、DMM-3を精製し、Mass spec解析により相互作用する蛋白質を同定した。更に、この同定した蛋白質をFLAGタグ化した株を作製し、同様な方法で精製とMass spec解析を行った結果、DMM-3と相互作用することを確認した。この結果、DMM-3はこの新規蛋白質と安定的に相互作用することが分かった。以上から、次年度に計画しているDMM-3の分子機構から生理作用に結びつけるために必要な実験系の確立を本年度中に遂行することができた。