著者
本間 利光
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.81, no.1, pp.89-92, 2010-02-05
参考文献数
15

2004年10月23日(土)17時56分頃、マグニチュード6.8の新潟県中越地震が新潟県中越地方で発生した。内陸直下型の地震で震源近傍の小千谷市及び川口町では、震度7相当の地震動が観測され、地震による農地・農業用施設の被害総額は約1300億円であった。翌春の作付けが不能と判断された水田面積は被災当初の2004年11月12日では長岡地域管内の水田面積の約54%、10,761haであったが、道路の仮復旧や水路の応急措置により年度末には24%に減少、翌年5月の作付け時までには4%まで復旧が進んだ。しかし、山間地の山古志村(現、長岡市山古志)では作付け不能面積は被災当初より増加し約78%の水田で作付け不能となった。これは19年ぶりの豪雪に見舞われ、融雪時期(3月中下旬)頃に多量の融雪水が地震の影響で不安定化した斜面内に浸透し、農道や棚田が崩落した土砂に埋まったためで、中越地震と豪雪がもたらした複合災害が原因と考えられた。中越地震の被害について地形や地質の面から検討した報告はいくつかあるが、ここでは農地や農業施設の被害について具体的な発生事例をもとに紹介するとともに、地震後に行われた災害復旧工事や実際の営農支援対策としての栽培指導について述べる。