著者
本間 貴子 米田 宏樹
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.25-38, 2014

本稿では、1910年代半ばから1930年代の社会適応を重視した時期におけるニューヨーク市公立学校固定式精神遅滞(欠陥)学級のカリキュラムの実態を明らかにした。当学級は、1910年代半ばから1930年代にかけて地域生活を教育目標とするカリキュラムを形成していった。当学級を出た後、地域で生活するために必要不可欠と考えられたのは適切な行動習慣であり、就労する力があることも望ましいとされた。教育実践や卒業後生活調査の中で精神薄弱児の行動が改善し、就労が可能な者がいることも明らかにされた。対象児は、従来より知能指数が高い行動問題のある怠惰児と社会適応が見込まれるIQ 50未満の精神遅滞児に拡大され、知能指数・精神年齢に行動問題を加味した学級編成がなされた。カリキュラムでは職業訓練の強化、性格教育の実施、地域資源を活用した「興味の中心」学習、道具教科としての読みが実施された。1910年代半ば以前からの運動機能訓練等は継続され、社会適応に傾注する中でも個々のニーズに応えるという理念を維持していた。