著者
朴 宗玄
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.219, 2004 (Released:2004-07-29)

本研究では、在日韓国人企業の事業所分布を取り上げ、産業属性・人口規模との関連性を分析する。_I_ 産業属性と事業所配置490都市を行、25産業部門を列とする490×25の行列を作成し、因子分析を行った結果、固有値1.0以上の共通因子が4つ抽出された。第_IV_因子までの累積変動説明率は85.5%に達しており、以下では、因子負荷量の絶対値が0.55以上の変数群を解釈する。第_I_因子で高い因子負荷量をもつ変数は、サービス業(「教育関連サービス業」「ホテル・娯楽業」「対企業サービス業」「対個人サービス業」)、小売業(「飲食店」「飲食料品小売業」「その他の小売業」)、卸売業、運輸通信業(「旅客運送業」「運輸サービス業」)、不動産業、保険業である。この因子には、製造業は含まれず、サービス業を中心とする第3次産業活動であるので、「非製造業活動を行う産業」を表す因子であると解釈した。因子得点が最も高い都市は、東京で、次いで名古屋、横浜、仙台、川崎である。第_II_因子で因子負荷量の高い変数は、製造業(「生産資材製造業」「機械器具製造業」)、運輸通信業(「運輸サービス業」「貨物運送業」)である。この因子は、生産設備などの重化学工業活動とその生産品の運送を含むサービス活動を表す因子である。したがって、この因子は、「重化学工業活動と貨物運送サービス活動を行う産業」を表す因子であると解釈した。因子得点値が最大の都市は、大阪で、次いで東大阪、東京、尼崎、神戸である。第_III_因子では、生活資材製造業、建設業(「総合工事業」「職別工事業」「設備工事業」)、銀行業の変数の因子負荷量が高い。この因子で抽出された産業は、生活資材の製造業活動、住宅や建物を含む様々な工事、そしてその資金調達先である銀行業であるため、生活基盤と深く関連する産業であるといえる。そのため、この因子は、「生活基盤とその付随的活動を行う産業」を表す因子であると解釈した。とくに、因子得点が最も高い都市は京都であり、次いで尼崎、大阪、広島、北九州、名古屋、横浜、大津、岡崎、宝塚、舞鶴、岸和田、草津などである。 そして第_IV_因子では、「家具小売業」「衣服・身の回り品小売業」「自動車小売業」「消費財製造業」が高い因子負荷量を持っている。この因子は、住民の生活に密着した小売業・製造業を表す因子として、「住民の生活に密着した小売・製造業活動を行う産業」と名付けた。因子得点をもとに導出した地域的分布パターンをみると、神戸が最も高い因子得点を示す。_II_ 人口規模と事業所配置 ここでは、都市別の在日韓国人企業の事業所分布の特徴を、韓国・朝鮮国籍人口規模、都市別人口規模と関連づけながら分析する。まず、韓国・朝鮮国籍と在日韓国人企業の事業所分布との関連性を分析する。主要都市別の韓国・朝鮮国籍人口と在日韓国人企業の事業所数との相関図をみると、在日韓国人企業の事業所の順位・規模は、全体的に連続した形態を呈する。対象都市490都市について、韓国・朝鮮国籍人口数と在日韓国人企業の事業所数の相関係数を算出すると、0.95ときわめて高い値が得られた。しかし、在日韓国人企業の事業所数は韓国・朝鮮人口数だけでは説明できない。このことは、東京・横浜、京都・神戸・尼崎、そして広域中心都市の在日韓国人企業の事業所数が韓国・朝鮮国籍人口規模から予想される以上に大きいこと、逆に大阪、名古屋、東大阪、川崎、などの在日韓国人企業の事業所数が韓国・朝鮮国籍人口規模に比べて小さいことから容易に理解できる。次に、在日韓国人企業の事業所分布と日本の人口との関連性を分析する。都市別人口と在日韓国人企業の事業所との相関係数は、0.87と高いが、韓国・朝鮮国籍人口から得られた相関係数(0.95)より低い。このことから、在日韓国人企業の事業所分布は、都市別人口規模よりも韓国・朝鮮国籍人口規模と類似した分布によってよりよく説明される。また、、大阪、京都、神戸、尼崎、東大阪、大津などの近畿地方の多くの都市は、人口規模から予想される以上に在日韓国人企業の事業所数が大きいのに対して、東京、横浜、千葉と広域中心都市は、人口規模から予想される以上に在日韓国人企業の事業所数が少ない。こうした結果は、前述した日本の事業所分布との相関の傾向とも一致する。