著者
伊藤 修毅 朴 恵貞
出版者
日本福祉大学子ども発達学部
雑誌
日本福祉大学子ども発達学論集 = THE JOURNAL OF CHILD DEVELOPMENT (ISSN:18840140)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.57-62, 2017-01-31

本研究ノートは, 主に知的障害児・者を対象としたセクシュアリティ教育の変遷をまとめたものである. 資料を整理した結果により, 4 つの時代に区分した. 1 つ目は「黎明期」と呼べるもので, 山本直英が萌芽的実践を結集し, 1 冊の本を出版するに至った. この本の執筆者たちが, "人間と性" 教育研究協議会障害児サークルを結成し, 実践的研究を進めている. 2つ目は, 「第一次発展期」と呼べるもので, 世論にも後押しされ, 障害児・者のセクシュアリティ教育の実践が発展していった. 3 つ目の時期は, 「バックラッシュ期」と呼べるもので, 障害児へのセクシュアリティ教育を糸口とする教育内容への政治的介入から始まる. その後, 12 年にわたる法廷闘争の間は, 障害児・者への性教育実践の停滞期となった. 4 つ目の時期は「第二次発展期」と呼べるもので, 七生養護学校事件の最高裁判決後の時期である. 加えて, 障害者権利条約を批准したことも大きな影響を与えている.