著者
朴 東錫 神田 美喜男 石川 自然 STEDING Gerd
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.863-869, 1987

先天性心疾患の成因は, 現在のところ不明な部分が多く, 成因を明らかにするために, 種々の研究がなされてきた.先天性心奇形の原因として遺伝的要因および環境的要因があるが多因性生物学的閾域説が最も有力である.近年臨床ならびに病理学的研究, 疫学的調査, 実験的研究により次第に先天性心奇形の成因が解明されつつある.われわれは, その一環として機械的物理学的因子である電気shockを鶏胚心に加えることによって, 両大血管右室起始を中心とした一連の心奇形spectrumを作成してきた.今回, われわれは, 電気shockによる生理学的変動を観察するために, 心電図, 超音波, ドプラーおよびComputed Echospecを用いた.<BR>実験方法と結果; 受精後3日以内, 100C以下に保存された白色レグホン卵をIncubatorで孵卵開始した.孵卵後3~4日目にHamburger-Hamilton24~27stageに直径10×8mmの穴を開け, 血管に損傷を与えないように卵殻膜を除去した.卵殻の周囲の温度は38℃以下には下がらないように保った.心電計の特長として.脳波, 筋電図, 心電図をはじめ, 各種生体電気現象を観察するためのアンプが用いられたことである.また, 各測定用の低域フィルター, および高域フィルターを内臓している.さらに交流障害を排除するハムフィルターも内臓されている.もう一つは超音波を応用した.ドプラーProbeは, 連続波10mHzのものである.Probeを直接Conotruncusに当て血流変動をみた.血流の変動をComputed Echospecに連結し, パワースペトラムによる解析が行われた.電気shock後心電図の所見として心拍数は210/min.から120~100に低下しPRの間隔も0.16~0.18sec.に延長した.心拍数が低下するに従い, 心室性の期外収縮, ΩRSのvoltage低下が認められた.その他QT間隔の延長も認められた.これらの変化は電気shock後3~15分の間が著明である.ドプラーの流速変動をみると, 電気shock3分後, 平均4674Hzで上昇するが, 30分には低値を示した.もう一つのParameterとして%Windowを分析してみると, 電気Shock3分後著しい上昇を示し, 15分後から低くなって来る.<BR>結論; 従来, われわれは, 電気Shockによって, 組織学的変化として, 細胞壊死, 変性などがみられたことを報告し心奇形との相関を示した.今回の実験Dataとして, 生理学的に, 組織学的変動を反映する心電図, ドプラーの変化が認められ, これらの総合した所見が心奇形を作成せしめる要因になるものと示唆された.