著者
朴 起里 惣田 訓 池 道彦
出版者
日本水処理生物学会
雑誌
日本水処理生物学会誌 (ISSN:09106758)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.69-79, 2017

嫌気性アンモニア酸化(アナモックス)を用いた連続処理リアクターによる窒素除去に及ぼす温度の影響を予測するための数理モデルを構築した。細菌の増殖速度の最高値を与える基本温度式を熊本の下水処理施設と北海道の畜産廃水処理施設の活性汚泥をそれぞれ種汚泥とする低温型リアクターLow-R1とLow-R2のアナモックスモデルに組み込んだ。最低温度(<i>T</i><sub>min</sub>)4℃、最高温度(<i>T</i><sub>max</sub>)36℃の範囲において、Low-R1のアナッモクス細菌の比増殖速度の最大値(&mu;<sub>opt</sub>)を最適温度(<i>T</i><sub>max</sub>)26℃において0.052d-<sup>1</sup>に設定した(実験値との相関係数<i>r</i> = 0.851)。Low-R2の&mu;<sub>opt</sub>、<i>T</i><sub>opt</sub>、<i>T</i><sub>min</sub>、<i>T</i><sub>max</sub>の値は、それぞれ0.089d-<sup>1</sup>、31℃、0℃、36℃に設定した(<i>r</i> = 0.995)。熊本の活性汚泥を種汚泥とする中温型リアクターMod-Rのアナモックスモデルには典型的な指数関数式を組み、アナモックス細菌の30℃における比増殖速度を0.055d-<sup>1</sup>、温度係数を0.104℃-<sup>1</sup>に設定した(<i>r</i> = 0.987)。水理学的滞留時間0.5d、汚泥滞留時間50~150d、水温10~35℃の条件におけるアンモニウム塩50mg-N/Lと亜硝酸塩60mg-N/Lを含む理想的な廃水の処理をこの数理モデルでシミュレーションした。その結果、Low-R1とLow-R2による窒素除去率は、Mod-Rよりも10℃付近の低温において高いことが予測された。汚泥滞留時間が短い場合、Low-R1はMod-Rよりも35℃付近の高温で窒素除去率が低いものの、Low-R2は10~35℃において高い窒素除去率を維持する結果が得られた。結論として、低温型アナモックスリアクターのうち、特にLow-R2は、温和な気候条件において加温を必要としない優れた窒素除去プロセスを開発するための十分な可能性を有していることが示唆された。