著者
朴 雅晴
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.1-9, 1981-04-20

本論文は,小学校算数科を対象として,完全習得を目指した授業システムを開発するために過去数ヵ年にわたって,行なわれた一連の研究結果をまとめたものである.それらの研究は,完全習得学習理論に基づいた一つの授業システムを試案としてとりあげ,そのシステムに従って設計された授業の効率を検証しようというものであった.本授業システムの適切さと妥当性を検証するために,二つの研究方法が用いられた.実験統制群法による研究および小規模トライアウトがそれぞれ2回行なわれた.対象となったのは2年生,5年生,6年生の児童たちであった.おもな結果は次のとおりであった.(1)完全習得学習への到達率:このシステムが活用された低学年の授業においては90%以上の生徒が90%以上の到達率を示した.(2)下位群に属する生徒たち(算数学力テストないしレディネステストの成績)の学習回復が有意に認められた.(3)高学年では,80%以上の生徒たちが80%以上の到達率に達した.(4)本授業システムにともなう教授・学習プログラムが開発され,その有効性が確かめられた.