著者
杉 二郎 井上 裕雄 田中 純生 野口 勝一 高倉 直 小穴 敬喜
出版者
Japanese Society of Agricultural, Biological and Environmental Engineers and Scientists
雑誌
生物環境調節 (ISSN:05824087)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.94-99, 1964-04-30 (Released:2010-06-22)

ここに紹介されている小型のファイトトロンの特徴はプラスチック材料を用いることにより太陽光の透過がずっと能率的になっていることと, 材料が軽いので破損の危険が少ないことの2点である.プラスチックの透明な屋根は122/3×163/4ftの広さで, 傾斜角度が23°で北側に13ft, 南側に9.2ftの長さがある.屋根は141/2×2ftのプレキシグラスのパネルを用いて断熱のために二重構造になっている.プラスチックの各層の下側の表面はプリズムになっていて, 太陽光を植物体に投射できるように設計されている.東, 西, 南側の壁も二重のプラスチックでできており, 外側は透明で内側は光を散乱するようピラミッド型の模様がつけられている.自動的に働くスプリンクラーから出る水が1日2回屋根の塵を流し去るようになっている.アルミニウム製の金具がプラスチックの屋根を支えており, 鉄線の張りを調節することにより真直に保てる.この金具によって屋根より入る太陽光の約8%が遮断されるにすぎない.プラスチックでできた両側の壁からは太陽の位置が低い早朝および夕方の光が室内に入るようになっており, とくに冬期にはその効果が著しい.春分, 秋分のとき, 1日平均して屋外の太陽エネルギーの約50%が室内のベンチの面でえられる.室内の日蔭の部分は朝から夕方にかけて平均化されるので, 各部分はほぼ同じ量の太陽エネルギーを受げる.両側面の窓の上下の部分の多くの孔をあけた壁および窓の高さに縦についた溝より, 調節された空気が出て, 東から西へ流れる.水平の溝と方向づけの羽根で室内のどの部分の空気の流通をも調節しうる.このファイトトロンを用いて太陽光の利用度, 調節用の動力経費, 室内での植物の生育状態などが現在調査されている.さらに太陽の位置の変化に応じて自動的に回転する効果的なファイトトロンも考察されている.