著者
杉下 奈美
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.554-566, 2007-12-28 (Released:2018-12-26)

コミュニカティブ・アプローチは1970年代以降、外国語教育における主流の教授法となっている。しかし近年、コミュニケーション能力を過度に重視する姿勢への懸念も高まっており、言語能力の捉え方についての再考が求められる。本稿では、このアプローチの理論的基盤となったデル・ハイムズによる「コミュニカティブ・コンピテンス」の概念を再検討し、外国語教育研究に包摂される思潮を考察した。その結果、従来の研究ではこの概念が学習者の能力としてではなく、学習の結果獲得すべき目標として捉えられてきたことが分かった。一方ハイムズにおいては、他者の発話を咀嚼しながら変容し続ける言語の能力に着目する概念であった。以上の考察を踏まえ外国語教育研究において、学習者がもつ能力に基づいて言語活動および文法教育の捉え方を再考すること、言語能力における文法的知識と社会的言語使用との関係を連続的に捉えることの必要性を提起した。
著者
杉下 奈美
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.554-566, 2007

コミュニカティブ・アプローチは1970年代以降、外国語教育における主流の教授法となっている。しかし近年、コミュニケーション能力を過度に重視する姿勢への懸念も高まっており、言語能力の捉え方についての再考が求められる。本稿では、このアプローチの理論的基盤となったデル・ハイムズによる「コミュニカティブ・コンピテンス」の概念を再検討し、外国語教育研究に包摂される思潮を考察した。その結果、従来の研究ではこの概念が学習者の能力としてではなく、学習の結果獲得すべき目標として捉えられてきたことが分かった。一方ハイムズにおいては、他者の発話を咀嚼しながら変容し続ける言語の能力に着目する概念であった。以上の考察を踏まえ外国語教育研究において、学習者がもつ能力に基づいて言語活動および文法教育の捉え方を再考すること、言語能力における文法的知識と社会的言語使用との関係を連続的に捉えることの必要性を提起した。