著者
菅井 基行 杉中 秀壽
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.461-473, 1997-04-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
61

細菌は細胞壁の主要成分ペプチドグリカンを代謝する複数の溶菌酵素を産生している。これらの溶菌酵素はペプチドグリカンの代謝を介して細菌の分裂, 分離, 形態の維持など様々な細菌の生理に関わっていると考えられている。従来, 溶菌酵素研究は一種類の細菌が複数の酵素を産生し, また溶菌酵素の比活性が高く, 精製が難しい等の難点があった。しかし, 近年, 新しいアッセイ法の開発, 分子生物学的手法の進歩によって新たな展開が見られている。ブドウ球菌はペニシリンGをはじめとするβ-ラクタム剤によって溶菌することから, 比較的古くから溶菌酵素研究の材料に用いられてきた。本稿では特にブドウ球菌の溶菌酵素に絞り, 現在までに得られた知識について整理し解説を試みた。