著者
菅井 基行 杉中 秀壽
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.461-473, 1997-04-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
61

細菌は細胞壁の主要成分ペプチドグリカンを代謝する複数の溶菌酵素を産生している。これらの溶菌酵素はペプチドグリカンの代謝を介して細菌の分裂, 分離, 形態の維持など様々な細菌の生理に関わっていると考えられている。従来, 溶菌酵素研究は一種類の細菌が複数の酵素を産生し, また溶菌酵素の比活性が高く, 精製が難しい等の難点があった。しかし, 近年, 新しいアッセイ法の開発, 分子生物学的手法の進歩によって新たな展開が見られている。ブドウ球菌はペニシリンGをはじめとするβ-ラクタム剤によって溶菌することから, 比較的古くから溶菌酵素研究の材料に用いられてきた。本稿では特にブドウ球菌の溶菌酵素に絞り, 現在までに得られた知識について整理し解説を試みた。
著者
椎山 理恵 持丸 奈央子 舩越 建 大山 宗徳 菅井 基行 天谷 雅行
出版者
協和企画
巻号頁・発行日
pp.193-196, 2018-02-01

<症例のポイント>toxic shock syndrome(TSS)は黄色ブドウ球菌の産生するtoxic shock syndrome toxin-1(TSST-1)やエンテロトキシンが原因となって、高熱、全身性の皮膚の紅斑、ショック症状をおこし、多臓器不全をおこすブドウ球菌感染症の一種である。タンポンを使用していたこと、また口腔粘膜の充血と体幹・四肢にびまん性の境界不明瞭な紅潮を呈した特徴的な皮疹から、早期にTSSを疑い治療開始したことで救命しえた。患者の腟・タンポンの培養から検出されたStaphylococcus aureusはMSSAであり、TSST-1/SECの毒素産生株であったことが確認できた。