著者
杉山 昌史
出版者
近畿大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究においては、マウス糸球体腎炎としてウシ血清アルブミン(以下BSA)による血清病腎炎を用いた。8週齢の雌IL-18R KO S129/B6マウスと、同じく8週齢の雌S129/B6マウスに、BSAを投与して血清病腎炎を作製し比較検討を行った。投与方法は前感作として、BSA 0.2mgを完全アジュバンドと混合し、マウス皮下に2週ごとに4回投与し、その後抗原として、BSA1.0mg/日をマウス腹腔内に連日4週間投与した。投与前、前感作中、抗原投与中は2週間ごとに検尿を実施し、蛋白尿定量を行った。投与終了後、屠殺し腎臓を摘出して、パラフィン包埋によるPAS染色標本と凍結切片を作製し、検鏡により糸球体病変、尿細管病変の評価を行い、蛋白尿の所見とともに腎炎の評価に用いた。評価についてはいずれも病理標本よりスコア化した。すなわち、糸球体病変については、正常糸球体の0点から、硝子化や半月体形成を来している高度糸球体病変の3点までの4段階で評価し、尿細管病変については、障害尿細管の割合よりスコア化を行った。マウス生存率はいずれも100%であった。BSA投与終了時の蛋白尿は、正常対照マウスにおいては10匹中4匹が3+、6匹が2+であったのに対して、IL-18R KOでは10匹とも1+であった。糸球体病変については正常対照マウスにおける平均スコアは、3.52であり、IL-18R KOにおいては0.85であった。尿細管病変については、正常対照マウスにおける障害尿細管の割合は、45.7%であり、IL-18R KOにおいては7.5%であった。また、凍結切片における糸球体免疫グロブリンの沈着も同様にスコア化したところ、正常対照マウスの平均1.8に対し、IL-18R KOでは平均0.9と抑制されていた(0〜3点)。これらのことから1L-18の抑制はマウス糸球体腎炎の進展を抑制することが示唆された。