著者
横田 理 佐藤 央 杉戸 雄四郎 水尾 圭祐 武田 健
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会 第36回日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.4093, 2009 (Released:2009-07-17)

【目的】ディーゼル排ガス (DE) 由来の排気微粒子 (DEP) は、大気環境中の浮遊粒子状物質の約半数を占めている。当研究室ではこれまでに DE 胎仔期曝露によって、ドパミン神経系の機能低下を引き起こすことを報告している。一方で、大脳や海馬等において、血管周囲の細胞で DEP 様粒子の蓄積、さらには細胞の変性像や末梢血管の閉塞などを観察した。しかし、DEP 曝露の影響は未だ未解明である。そこで本研究では、胎仔期に DEP を曝露したマウスを用いて行動学的解析を中心に脳神経系への影響を検討することとした。【方法】DEP (Lot. No. 060612) は結核研究所のディーゼルエンジン (いすゞ、排気量 2,369 cc) の希釈トンネルより採取したものを用いた。これを 0.05 % Tween 80 を含む生理食塩水に懸濁し、投与直前に超音波処理を約 2 時間行った。胎仔期曝露では、ICR 系妊娠マウスに対して DEP 100 μg / body / time を妊娠 6、9、12、15、18 日目に皮下投与した。雄性産仔は 3 週齢時に離乳し 5 週齢より行動試験を行った。行動試験は Spontaneous motor activity (自発運動量の評価)、Rotating rod test (運動協調性の評価)、Elevated plus maze test (不安情動性の評価)、Water maze test (空間学習・記憶の評価)、Passive avoidance test (学習・記憶の評価)、Forced swimming test (モチベーションの評価) により詳細な解析を行った。【結果・考察】胎仔期 DEP 曝露により、Elevated plus maze test では Open arm へのエントリー回数の減少が認められた。また、Water maze test において DEP 曝露マウスはプラットホームに到達するまでの時間が有意に長かった。本研究において、胎児期DEP 曝露が不安惹起並びに空間学習・記憶の低下を引き起こす可能性が示唆された。