著者
横田 理央
出版者
分子シミュレーション研究会
雑誌
アンサンブル (ISSN:18846750)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.85-89, 2012-04-30 (Released:2013-04-30)
参考文献数
11

Treecode やFMM などのアルゴリズムはN 個の粒子同士の相互作用の計算量を精度と引き換えにO(N2) からO(N logN) もしくはO(N) に軽減することができる.これらの手法では,粒子をセルに分割し木構造を構築した後,その木構造を走査しながらセル単位で相互作用を計算する.このとき,木構造の走査は並列化が容易でありGPU 上での計算に向いているが,木構造の構築はGPU への実装の際に多少の工夫を要する.ここでは,GPU 上での木構造の構築の一例を示すとともに,性能向上に必要なアルゴリズム上の工夫に関する検討を行う.
著者
武田 健 新海 雄介 鈴木 健一郎 柳田 信也 梅澤 雅和 横田 理 田井中 均 押尾 茂 井原 智美 菅又 昌雄
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.131, no.2, pp.229-236, 2011 (Released:2011-02-01)
参考文献数
42
被引用文献数
5 12 3

In order to discuss the health effects of nanomaterials, we cannot disregard the research on the health effects of airborne particulates. It is said that many of the fine or ultrafine particles in airborne particulates originate from diesel vehicles in metropolitan areas. The results of not only animal experiments but many epidemiologic surveys and volunteer intervention experiments in humans are reported on the health effects of particles. Although the health effects of the particulate matter particle sizes below 10 μm (PM10) were investigated in the initial studies, recently even smaller particles have come to be regarded as questionable and research of the health effects of the minute particulate matter below 2.5 μm (PM2.5) has been done. However, our recent study about maternal exposure to diesel exhaust suggests that health effect study of PM0.1, particles below 0.1 μm (100 nm), namely nanoparticles, is necessary from now on. We are proceeding with the study of the health effects of various types of intentionally produced nanomaterials such as carbon black, carbon nanotube, fullerene and titanium dioxide, examining in particular their influence on next generation. Although there are differences in the sites affected and the seriousness of the damage, basically similar findings to DEPs mentioned above are being discovered in research on nanomaterials. Regardless of dosage and administration method, such as inhalation, endotracheal administration, nasal drip and subcutaneous administration, once nanomaterials enter the bloodstream of a pregnant mother mouse, they move to the offspring and have effects on them. The effects may appear as various symptoms in the process of growth after birth, and can sometimes lead to the onset and aggravation of serious diseases.
著者
横田 理博
出版者
電気通信大学
雑誌
電気通信大学紀要
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.90-101, 2017-02-01

Eighty university students responded to a questionnaire which asked how much importance they placed on fifty-five items regarding conduct, attitude and goal-orientation which are related to ethics and morals. This paper shows the results of the responses and its analysis. It might contribute in some way to the understanding of the ethical consciousness of the university students. Students were asked to rate each item on a 4-point Likert scale from 0 – not important at all to 4 – very important. The question items are as follows: 1. Do not injure others, 2. Do not steal anything belonging to others, 3. Be kind to every person, 4. Get along well with others and keep in harmony, 5. Do not lie (be honest), 6. Trust others, 7. Make a good friend, 8. Help and care for the weak, 9. Obey social rules and keep public order, 10. Be polite, 11. Discriminate between right and wrong, 12. Criticize what is wrong, 13. Punish a bad person, 14. Contribute to your regional community, 15. Contribute to your nation, 16. Act in accordance with how you think society should be, 17. Vote in an election, 18. Be dutiful to your parents, 19. Take care of your family, 20. Respect your elders, 21. Help younger people, 22. Do not boast nor domineer, 23. Have self-confidence, 24. Have pride in yourself, 25. Do not be overconfident, 26. Do not worry about not receiving recognition from others, 27. Be independent, 28. Have a sense of responsibility, 29. Admit your errors frankly, 30. Be serious, sincere and earnest, 31. Be prudent, cautious and careful, 32. Do not be cheated or tricked, 33. Maintain a balanced view (do not be prejudiced), 34. Do not pretend to know something which you actually do not know, 35. Acquire a wide range of knowledge, 36. Acquire technical knowledge and skill in a specialized field, 37. Judge a situation properly in an emergency, 38. Behave in accordance with your faith, 39. Have a consistent faith (do not depart from your principles), 40. Be courageous, 41. Behave positively and actively, 42. Have patience, 43. Make effort (do your best), 44. Keep calm (do not be hot-tempered emotionally), 45. Do not be greedy (be satisfied with your situation), 46. Have a stable peace of mind, 47. Have a flexible mind without any attachment, 48. Be lively and cheerful, 49. Believe in God or Buddha, 50. Maintain your health, 51. Earn a large income, 52. Try to look attractive (take care in how you look), 53. Pursue your own happiness, 54. Make full use of your individuality (personality), 55. Find worth in your life and a reason for living. The result of this questionnaire is as follows: The items which most students felt "very important" are, first, "Do not steal anything belonging to others", second, "Do not injure others", third, "Judge a situation properly in an emergency", forth, "Admit your errors frankly" and "Maintain your health", sixth, "Find worth in your life and a reason for living". The items which most students felt "most important for their own way of life" are, first, "Take care of your family", second, "Make effort (do your best)", third, "Find worth in your life and a reason for living", forth, "Do not injure others", fifth, "Admit your errors frankly", "Behave in accordance with your faith" and "Pursue your own happiness". 倫理・道徳に関わるふるまい方・態度・目標などの55の項目を列記して、それぞれの項目をどの程度重要だと考えるかという問いを提示し、80名の学生に回答してもらった。このアンケートの回答を集計し、分析を試みた。学生の倫理意識の解明のために役立てたい。 質問した項目は下記の通りである。1. 他人に危害を加えない、2. 他人のものを盗まない、3. 誰に対しても親切にする、4. 他人と仲良くし調和を保つ、5. 嘘をつかない(正直)、6. 他人を信頼する、7. よい友達をつくる、8. 弱者を助ける(いたわる)、9. 社会の秩序(ルール)を守る、10. 礼儀正しさ、11. 正しいことと正しくないこととを区別する、12. 正しくないことを批判する、13. 悪人をこらしめる、14. 地域に貢献する、15. 国家に貢献する、16. 社会のあるべきあり方を考え、行動する、17. 選挙に投票に行く、18. 親孝行、19. 家族を大事にする、20. 年長者・先輩に敬意をもつ、21. 年少者・後輩を助ける、22. いばらない、23. 自信をもつ、24. 自分に誇り(プライド)をもつ、25. 自信過剰にならない、26. 他人に認められなくても苦にしない、27. 主体性をもつ、28. 責任感、29. いさぎよさ(自分の失敗を認める)、30. まじめ・誠実・真剣、31. 慎重、32. だまされない、33. バランス感覚をもつ(かたよらない)、34. 知ったかぶりをしない、35. 広い教養を身につける、36. 専門的な知識や技能を身につける、37. とっさの時に適切な状況判断ができる、38. 自分の信念に従って行動する、39. 信念をまげない(一貫させる)、40. 勇気をもつ、41. 積極的に行動、42. 忍耐(がまん)、43. 努力する(がんばる・一生懸命)、44. 感情的にかっとならずに冷静さを保つ、45. がつがつしない(足るを知る)、46. 心の安定、47. こだわりのないしなやかな心をもつ、48. おおらかさ・快活、49. 神や仏を信じる、50. 健康を保つ、51. 高収入を求める、52. 見ばえ(かっこう)をよくする、53. 自分の幸福を追求する、54. 自分の個性を生かす、55. 自分の生きがいをもつ。 次のような結果が出た。「たいへん重要」だと感じる学生が多い項目は、一位「他人のものを盗まない」、二位「他人に危害を加えない」、三位「とっさの時に適切な状況判断ができる」、四位「いさぎよさ(自分の失敗を認める)」、同四位「健康を保つ」、六位「自分の生きがいをもつ」であった。また、「自分にとってとくに重要」だと感じる学生が多い項目は、一位「家族を大事にする」、二位「努力する(がんばる・一生懸命)」、三位「自分の生きがいをもつ」、四位「他人に危害を加えない」、五位「いさぎよさ(自分の失敗を認める)」、同五位「自分の信念に従って行動する」、同五位「自分の幸福を追求する」であった。
著者
横田 理 佐藤 央 杉戸 雄四郎 水尾 圭祐 武田 健
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会 第36回日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.4093, 2009 (Released:2009-07-17)

【目的】ディーゼル排ガス (DE) 由来の排気微粒子 (DEP) は、大気環境中の浮遊粒子状物質の約半数を占めている。当研究室ではこれまでに DE 胎仔期曝露によって、ドパミン神経系の機能低下を引き起こすことを報告している。一方で、大脳や海馬等において、血管周囲の細胞で DEP 様粒子の蓄積、さらには細胞の変性像や末梢血管の閉塞などを観察した。しかし、DEP 曝露の影響は未だ未解明である。そこで本研究では、胎仔期に DEP を曝露したマウスを用いて行動学的解析を中心に脳神経系への影響を検討することとした。【方法】DEP (Lot. No. 060612) は結核研究所のディーゼルエンジン (いすゞ、排気量 2,369 cc) の希釈トンネルより採取したものを用いた。これを 0.05 % Tween 80 を含む生理食塩水に懸濁し、投与直前に超音波処理を約 2 時間行った。胎仔期曝露では、ICR 系妊娠マウスに対して DEP 100 μg / body / time を妊娠 6、9、12、15、18 日目に皮下投与した。雄性産仔は 3 週齢時に離乳し 5 週齢より行動試験を行った。行動試験は Spontaneous motor activity (自発運動量の評価)、Rotating rod test (運動協調性の評価)、Elevated plus maze test (不安情動性の評価)、Water maze test (空間学習・記憶の評価)、Passive avoidance test (学習・記憶の評価)、Forced swimming test (モチベーションの評価) により詳細な解析を行った。【結果・考察】胎仔期 DEP 曝露により、Elevated plus maze test では Open arm へのエントリー回数の減少が認められた。また、Water maze test において DEP 曝露マウスはプラットホームに到達するまでの時間が有意に長かった。本研究において、胎児期DEP 曝露が不安惹起並びに空間学習・記憶の低下を引き起こす可能性が示唆された。
著者
横田 理博
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.83, no.3, pp.789-811, 2009-12-30

西田幾多郎の『善の研究』がウィリアム・ジェイムズからの大きな影響のもとに成立したことは周知である。これまでの研究では、両者の「純粋経験」概念の共通性と異質性とが問題とされてきた。しかし、本稿は、従来の研究が「純粋経験」に関心を向けてきたがゆえに、西田とジェイムズとの本当の関係が見失われてきたのではないかという疑念のもとに、次の二点に光をあてる。第一に、両者は「神人合一」の「宗教的経験」という状態を宗教論の中心に置いた。とはいえ、ジェイムズの考察が経験科学的な宗教心理学の立場であるのに対して、西田は独自の宗教哲学を語ろうとした。第二に、科学の抽象性よりも現実そのままの豊かな光景を本質的なものとするフェヒナーの思想に両者は共感している。しかし、ジェイムズが「多元論」的立場をとるのに対して、西田は「一元論」的な立場をとる。
著者
横田 理 押尾 茂
出版者
一般社団法人 日本DOHaD学会
雑誌
DOHaD研究 (ISSN:21872562)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.103-108, 2023-03-31 (Released:2023-03-31)

医薬品候補化合物のおよそ10%弱に精巣毒性が生じる。この毒性は結果として、精子形成サイクルを経て精子へと伝わるため、生殖細胞系列に生じたゲノム異常が精子まで残され蓄積すると、受精を介して父親由来の先天異常などの発生毒性のリスクとなり得る。本稿では、化学物質と精巣毒性について概要を整理し、Developmental Origins of Health and Disease (DOHaD) 学説では比較的評価の遅れている雄性生殖の側から発生・発達毒性を考える場としたい。
著者
大友 広幸 横田 理央
雑誌
研究報告ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC) (ISSN:21888841)
巻号頁・発行日
vol.2021-HPC-180, no.7, pp.1-9, 2021-07-13

NVIDIA TensorCore は最大 300TFlop/s 以上の性能を持つ混合精度行列積演算回路である.TensorCore は深層学習からの高い行列積需要に対応するために開発されたが,線型方程式の反復解法やフーリエ変換など,深層学習以外の分野への応用も研究されている.密行列積計算も深層学習に限らず幅広い分野において重要な計算である.TensorCore は入力として半精度(FP16)行列をとるため,これを用いて単精度(FP32)密行列積計算を行う場合は,はじめに入力行列を半精度へ変換する必要がある.しかしこの操作によって単精度度行列積の計算精度が劣化する.そこで入力行列を半精度へ変換する際に失われる仮数部を別の FP16 変数で保持し,これを用いて単精度行列積の計算精度を補正する手法が考案された.この手法では単精度演算器を用いた行列積と比較して高速に計算可能ではあるが,誤差の蓄積が大きく計算精度が悪いという問題が確認されている.本研究ではこの誤差蓄積の原因となる 2 つの問題に着目し,それらの改善を行うことで,単精度演算器で計算した場合と同等の計算精度でより高速な単精度行列積手法を開発した.この手法をオープンソースの行列積ライブラリである NVIDIA CUTLASS に実装し,様々な入力行列での計算精度・計算性能の評価を行った.計算性能では 40TFlop/s 以上の性能を実現した.
著者
横田 理博
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.83, no.3, pp.789-811, 2009-12-30 (Released:2017-07-14)

西田幾多郎の『善の研究』がウィリアム・ジェイムズからの大きな影響のもとに成立したことは周知である。これまでの研究では、両者の「純粋経験」概念の共通性と異質性とが問題とされてきた。しかし、本稿は、従来の研究が「純粋経験」に関心を向けてきたがゆえに、西田とジェイムズとの本当の関係が見失われてきたのではないかという疑念のもとに、次の二点に光をあてる。第一に、両者は「神人合一」の「宗教的経験」という状態を宗教論の中心に置いた。とはいえ、ジェイムズの考察が経験科学的な宗教心理学の立場であるのに対して、西田は独自の宗教哲学を語ろうとした。第二に、科学の抽象性よりも現実そのままの豊かな光景を本質的なものとするフェヒナーの思想に両者は共感している。しかし、ジェイムズが「多元論」的立場をとるのに対して、西田は「一元論」的な立場をとる。
著者
横田 理博
出版者
電気通信大学
雑誌
電気通信大学紀要 (ISSN:09150935)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.15-35, 2015-02-27

Kitaro Nishida (1870-1945), a philosopher, served as a teacher at Yamaguchi-Kotogakko, a college under the old system, from 1897 to 1899. In this article, I will explore how Nishida lived and what he contemplated during his stay in Yamaguchi. In the first section, I explain about the school where he worked and discuss where he lived. Then, I will inquire into his diaries, letters and articles, in the second, third and fourth sections respectively. Reading his diaries during his stay in Yamaguchi, you gain a strong impression of his will, which he used to focus his consciousness as part of his Zen training to live an ascetic life. He also enjoyed climbing mountains, seeing waterfalls and playing a kind of football. His daily experience in nature and his practice of contemplation provided a context for his ideas about experience and the knowledge of reality. In the sixteenth century, Francis Xavier visited Yamaguchi. He spent more time propagating Christianity in Yamaguchi than anywhere else he visited in Japan. In the Meiji Era, Amatus Villion, a missionary, searched for the place where Xavier lived and found it in 1893. According to Nishida’s letter to his friend, while he was in Yamaguchi he was deeply impressed by the words, “Which of you by taking thought can add one cubit unto his stature?” which is written in the sixth chapter of The Gospel according to Matthew. This helped him get rid of his dissatisfaction and complaints and feel easy and peaceful. Yasunosuke Yamamoto published an article in 1898 called “Religion and Reason”. According to it, every religion has it’s own >creed<, which is identified with a dogma. Men who believe the creed have >beliefs<. The emotions that drive us to seek spiritual peace hinder the development of reason in a religion and so men accept a creed blindly and irrationally. Yamamoto expressed a view that we should not be restrained by our >emotions< and should develop our >reason< in our religion. Nishida objected to Yamamoto’s view of religion. In the same year, he published an article, “My comment on Mr. Yamamoto’s article titled ‘Religion and Reason.’ ” He says, “It is not true that a creed precedes a belief, but it is true that a belief precedes a creed.” We can escape from the limited world, go into the unlimited world, unify with the Absolute and experience “the reason why the reality of the active universe as a whole is what we see.” Nishida called this kind of >intuitive understanding< a >belief<, which is most important for him. The >belief< is originally beyond words but becomes expressed as a >creed< with concepts and words, which is not so important for him. His view of religion attaches greater importance to the intuitive and emotional understanding than to the only intellectual knowledge and understanding. Nishida found in the center of religion a desire to escape from the limited world and unify with the Unlimited. He regarded God not as transcendent out of the cosmos but as working immanently in the midst of the cosmos. Such a view of religion during Nishida’s stay in Yamaguchi was expressed also in Study on the Good (Zen no Kenkyu) which was published in 1911. 哲学者、西田幾多郎(1870~1945年)は、明治30(1897)年から明治32(1899)年まで、旧制の山口高等学校の教師を務めた。本稿は、山口時代の西田がいかに生き、いかに思索していたのかについて考察する。第一章では、西田の職場である「山口高等学校」とはどのような学校なのかを述べ、そして、西田が山口のどこに住んでいたのかについての情報を整理する。そのあと、彼の日記・書簡・著作に順次目を向ける(第二・三・四章)。 山口滞在中の彼の日記には、禅の修行、そして自分の生活を禁欲的に律することへと意識を集中しようという決意がみなぎっている。その一方で、山に登ることや滝を見ることやサッカーをすることを楽しんでいる。そのような日常の経験が彼の思索の背景にある。 山口は、16世紀にフランシスコ・ザビエルが日本で最も長い期間滞在し布教した土地であり、1893年、ヴィリオン神父の尽力によって、ザビエルの住居の場所が発見された。西田が友人に宛てた書簡によれば、彼は山口で「マタイによる福音書」第六章の「あなたたちのうちの誰が、思い煩ったからといって、自分の背丈を一尺ほどでも伸ばせるであろうか」という言葉に感動し、それによって、いろいろな不満が解消し、心が安らかになったという。 ところで、山本安之助は「宗教と理性」という論文を1898年に発表した。それによれば、いずれの宗教にも「信条」(教理)があり、信者はこれを信仰する「信念」をもっている。安心を求める感情が、宗教において理性が働くことを阻害し、人々は盲目的・非合理的に信条をうけいれる。山本は、宗教において、「感情」に束縛されずに「理性」を働かせなければならないという「啓蒙」的な主張を表明している。 この山本の宗教論について西田は反発し、同じ年、「山本安之助君の『宗教と理性』と云ふ論文を読みて所感を述ぶ」と題する論文を発表する。西田は「信条ありて而して後信念あるにあらず、信念ありて而して後信条あるなり」と言う。つまり、彼にとって何より大事なのは、有限界を脱して無限界に超越して絶対的なるものと一体化し、「宇宙実在が全体として活動する所以のもの」を「感得」することとしての「信念」であった。「信念」が概念化され言葉となった「信条」はそれほど重要ではない。宗教において、このような「感得」や「感情」を重視する一方で、「智識」や「理解力」は重視されない。 有限世界を脱して無限なる力に合一することを宗教の中心に置き、神はこの宇宙の外に超越しているのではなく、この宇宙のただなかで働いていると考える西田の山口時代の宗教観は、1911年に発表される『善の研究』でも継承されることになる。
著者
長沼 大樹 横田 理央
雑誌
第81回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, no.1, pp.315-316, 2019-02-28

深層学習では極めて膨大な学習データを用いて学習することで他の機械学習手法を圧倒する高い性能を発揮している一方, その膨大な計算時間のため,大規模並列化によって学習時間を短縮するのが喫緊の課題である. 深層学習における問題は訓練データとの誤差を表す関数の最小化問題に帰結するが, 近年の研究によって,大規模並列化に伴うバッチサイズの増加により得られる学習モデルの汎化性能が劣化することが示されている. 本研究ではこの問題の解決方法として目的関数に対する平滑化に着目し, バッチサイズの増加を伴っても汎化性能を劣化させない目的関数の平滑化手法について検証を行う.
著者
中田 光 大沢 和樹 横田 理央
雑誌
第81回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, no.1, pp.461-462, 2019-02-28

深層学習は与えられた膨大なデータに対し柔軟な学習を可能にする一方、学習を汎化させ未知のデータに対しても精度を保つことが一つの大きな課題となる。近年では、ベイズ推定を深層学習に適用し、学習によって得られたニューラルネットワークの重みの不確かさを推定することにより学習を汎化させる試みが注目されつつある。Zhangらによって提案されたNoisy K-FACは、自然勾配法に基づく一種の変分推論を行うことによりベイズ推定を行う手法であり、学習が汎化することが示されている。本研究ではNoisy K-FACに着目し、重みの更新時に複数のサンプルを用いた場合の学習の変化ついて比較検証を行った。
著者
横田 理博
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

マックス・ウェーバーの宗教論を、同時代の様々な立場からの宗教論(ジェイムズ・ニーチェ・ジンメル・西田幾多郎・ヤスパースなど)と比較することを通じて、宗教哲学・宗教心理学・宗教社会学といった諸アプローチが分化していく状況を把握し、宗教についての多角的理解を追求した。その一環として、ミュンヘンのバイエルン学術協会に保管されているウェーバーの旧蔵書を閲覧し、蔵書へのウェーバーの書き込みについて調査した。
著者
横田 理
出版者
日本大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

本研究では、まず眼圧の測定原理をヒントにして測定方法を考えた。これを基に柔らかさ試験機の実用化を目指して、我々が提案する柔らかさの定義と測定方法について、実際に柔らかさ試験装置を開発し、空気噴射力による軟体物やうさぎの臓器等の被測定物表面に発生させたくぼみを計測して、それぞれの柔らかさを調べた。さらに、粘弾性測定ができるように装置の改良を行っている。本試験装置は、被測定物に流体(空気)を吹付けるノズル、ノズルに流体を送り込むコンプレッサ、流体を等速度で被測定物に噴射させるレギュレータとそのときの圧力を測定する圧力センサ、噴射された被測定物表面のくぼみを測定する形状検知装置、コンプレッサおよびレギュレータを制御する制御部、および表示部より構成されている。噴流により被測定物表面を圧平する力は、デジタル荷重計により予め求めておく。ノズル先端から被測定面までの距離1を設定したときに噴射力Fは決まるので、被測定物表面に生じたくぼみ深さh、およびくぼみ直径dは形状検知センサで計測する。被測定物の柔らかさ(Pa)は、被測定物に働く力Fをくぼみの表面積πdhで除した商より求められる。(1)圧縮空気を吹付けてくぼみを発生させ、そのときの空気圧、くぼみの直径と深さを計測する簡単な方法である。(2)本装置は柔らかさと粘弾性特性(クリープおよびクリープ回復)の測定が可能である。(3)本試験機は比較的簡単な方法でかつ迅速な計測であり、非接触・非破壊試験方法のため、衛生的であり、高い安全性をもつ。