著者
杉本 和寛
出版者
東京芸術大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1998

1,昨年度(平成10年度)に引き続き、赤穂浪士事件に関する資料の閲覧と調査、および収集をおこなった。東京での国会図書館・東京大学総合図書館等の調査をはじめ、京都・大阪・名古屋等への出張調査がこれに該当する。当科学研究費補助金によって、多数の複写物および、写本『赤穂鐘秀記』などを資料として購入することができた。2.資料のデータベース化について、浮世草子に関しては、赤穂浪士物の第一作である『傾城武道桜』(宝永2刊)本文のデータを完了し、『傾城播磨石』(宝永4刊)・『傾城伝授紙子』(宝永7刊)・『忠義武道播磨石』(宝永8刊)等についてもデータ化の作業を遂行中である。実録に関しては、最初期のものと思われる『介石期』のデータベース化を終え、本文の異同について調査中である。また、上記『赤穂鐘秀記』や私費にて購入した『赤穂精義内侍所』・『新撰大石記』についても随時データ化を行っている。特に享保初年頃までに成立したと思われる『新撰大石記』については、『介石記』を頻繁に引用しており、当事における『介石記』に記事に対する信頼性を窺わせるものであり、より精査をおこなうことを予定している。3.平成11年度の東京芸術大学における総合講義におけて(平成11年12月17日)において、事件の虚構化のプロセスと文芸化という観点から論じた。一般的に事件が様々な情報によって肥大化していくパターンによって説明できる部分と、赤穂事件特有の虚構化の様子について解説をしたものである。