著者
杉江 伸祐 成瀬 廉二
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.117-127, 2000-03-15
被引用文献数
2 4

積雪中の水の移動を知る上でもっとも重要なパラメータである不飽和透水係数を, しまり雪 (平均粒径0.5mm, 平均密度530kg/m<SUP>3</SUP>) および中ざらめ雪 (1.3mm, 620kg/m<SUP>3</SUP>) と大ざらめ雪 (1.7mm, 610kg/m<SUP>3</SUP>) の3種類の雪について実験室で測定した.実験は, 0℃の恒温槽内にて, 水の流下フラックスを一定にする「フラックス制御型定常法」によって行った.積雪中の水の負圧 (サクション : <I>h</I>) と流下フラックスから, 不飽和透水係数<I>K</I>とサクション<I>h</I>の関係<I>K</I> (<I>h</I>) を求めた.次に水分特性 (サクションと含水率の関係) の測定結果を用い, 不飽和透水係数と重量含水率θ<I><SUB>w</SUB></I>の関係<I>K</I> (θ<I><SUB>w</SUB></I>) に変換した.その結果, 不飽和透水係数Kは, 含水率の減少にともないべき乗の関係で減少することが分かった.これを<I>K</I>=<I>a</I>θ<SUP><I>m</I></SUP>で表わすと, 減少率を表わす<I>m</I>は雪質の違いによって大きな差があり, しまり雪 : 1.9, 中ざらめ雪 : 4.8, 大ざらめ雪 : 6.3となった.従来の研究では, べき乗数を一義的に3とすることがあるが, 雪質によって使い分けなくてはならない.また不飽和透水係数は, 高い含水率の時, ざらめ雪>しまり雪, 低い含水率の時, ざらめ雪<しまり雪の関係が得られた.このことは, ざらめ雪としまり雪で層を形成している時, 含水率によっては浸透を阻害する層構造があることが示唆された.