著者
杉江 典子
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.1-18, 2011-03-30

本研究では,公共図書館における利用者の情報探索行動を説明できるような概念と理論を導くことを目的とした。そこで公共図書館5館において,利用者への半構造化インタビューを行い,得られたデータを修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチにより分析した。その結果,35の概念が導かれ,それらの概念は7つのカテゴリに整理された。7つのカテゴリとは,"知りたい/読みたい気持ちの蓄積","図書館での探索に対する認識","探索にあたっての気分","物理的な条件","探索の実行","情報/資料の入手","探索結果に対して抱くもの"である。さらに,"知りたい/読みたい気持ちの蓄積"が"探索の実行"の直接の要因になり,"図書館での探索に対する認識"が個人の"探索の実行"のあり方に影響を与え,探索の結果,"情報/資料の入手"が起こり,"探索結果に対して抱くもの"が表れるといった,カテゴリ間の関係も明らかになった。
著者
杉江 典子
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.71-89, 2017

<p>本研究の目的は,無線周波個体識別の技術を応用した観察法を用いて利用者の情報探索行動に関するデータを収集し,クラスタリングにより利用者を類型化すること,位置情報を用いた分析の利点を検討することである。2012 年に千代田区立千代田図書館において動線調査と質問紙調査を実施し,取得した209 人の位置情報を,1)訪問地点の範囲の広がりと集中,2)移動経路の類似度により分析した。その結果,1)資料を借りた利用者の多くが,短時間滞在し特定の書架で資料を探していること,資料を借りなかった利用者は,より多様な行動を取っていること,2)クラスタ1 には,借りる資料を探すために館内を巡る利用者が多いこと,クラスタ2 には資料を閲覧して過ごした利用者が多いこと等が明らかになった。さらにRFID を用いて得た位置情報は,目視の位置情報に比べ客観的で論拠として示しやすいこと,統計処理に適していることなどの利点が示された。</p>
著者
杉江 典子
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.117-131, 2008-06-30

本研究の目的は,わが国の市町村立図書館におけるレファレンスサービスの利用者に関する既往調査を整理し概観することによりその傾向を明らにし,既往調査の全体像を示すことである。そのために,1970年代以降に実施されたレファレンスサービスに関する利用者調査を扱う文献29件を収集しそれらを分析した。さらに個々の調査結果からレファレンスサービスの利用者に関する調査結果を抽出し,分析した。その結果,既往調査の大半が図書館サービス全般の利用者調査の一部として行われており,調査手法は質問紙調査が主流であるなど限られた調査しか行われていないことが明らかになった。また利用者のレファレンスサービス利用として,1)調べものの利用者の割合が資料の借り出しや返却に比べると低いこと,2) 10代,20代の利用割合がその他の年代に比べて高いこと,3)学生の利用割合が高く主婦の利用割合がその他の職業に比べて低いこと,4)女性よりも男性の利用割合が高いことなどが明らかになっていることがわかった。