著者
杉浦 惠子 横山 芳子
出版者
松本短期大学 紀要委員会
雑誌
松本短期大学研究紀要 (ISSN:09107746)
巻号頁・発行日
no.25, pp.73-78, 2016-03

妊婦の栄養管理は、出産する児の体重管理に大きく影響するだけでなく、低栄養傾向は、胎児の生活習慣病素因を形成する影響もあるため重要である。そのため非妊娠時BMI に基づいた推奨体重の保健指導が行われている。そこで本研究では、妊娠時の体重増加に影響を与えた要因を検討する。 A市の乳児4 か月健診を2013 年1 月~ 6 月に受診した児の母親に、無記名自記式質問紙調査を実施した。質問内容は母親の年齢、身長、出生児の順位、出産週数、児の出生時体重、妊娠中の体重増加に関してである。 研究対象者の平均年齢は31.9 ± 4.6 歳、非妊娠時BMI は、18.5 未満86 名(22.3%)、18.5 ~ 25 未満278名(72.2%)、25 以上21 名(5.5%)で、出産時までの平均体重増加量は9.9 ± 3.7kg であった。医療従事者から体重の指導あり214 名(55.2%)、指導なし174 名(44.8%)と約半々であり、全員に推奨体重・適正体重が周知されているわけではなかった。周囲の人から体重に関して言われたことがある105 名(27.1%)、言われたことがない279 名(71.9%)と言われない者が多かった。言われた相手は実母41 名、友人24 名、夫23 名、義母14 名の順であった。 児の出生時体重の平均は3,038 ± 366g であった。2,500g 未満の児の母の体重増加量は7.7 ± 4.2kg と、2,500g 以上の児の母の体重増加量10.0 ± 3.6kg より有意に少なかった。また、母のBMI とは有意差はなく、推奨体重と母自身の理想体重増加量との適否で有意差がみられた(p <0.05)。 妊婦に最も影響を与える医療従事者による適正体重の指導が重要である。また、周囲の言葉によっても、2割近い人が体重増加に影響を受けたとしているため、適正体重に関する知識についてのポピュレーションアプローチが必要である