著者
柳澤 博紀 杉浦 琢
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.15-23, 2020-01-31 (Released:2020-10-23)
参考文献数
15

チック症状に対する行動療法として、ハビット・リバーサル(Habit Reversal: HR)の有効性が示されているが、音声チックや重症度の高い症例の蓄積が少ないと国内外で指摘されている。本研究では叫び声様の重度音声チック症状を抱えたクライエント(Cl.)に対してHRを含んだ行動療法を実施し、客観的行動指標を用いたうえで単一症例研究法により効果を検証した。Cl.は40代女性、入院後約1カ月の服薬治療も著効なく行動療法を開始した。ベースラインでは1日5時間の測定を4日行い、叫び声の頻度は1日平均93.5回であった。介入は各回約15分程度心理士と共に咳払いを用いた競合反応訓練を練習すること、および同様の練習を日常的に実施する宿題であった。介入は25日間で10回実施した。介入開始後叫び声の頻度は大幅に減少し、約4週で叫び声は生起しなくなりCl.は退院した。介入実施後3年経過後も症状の再発は見られていない。重度音声チック症状に対するHRの有効性が示唆された。