著者
杉田 俊介
出版者
基督教研究会
雑誌
基督教研究 (ISSN:03873080)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.38-54, 2007-06

ヒックの宗教多元主義は、西洋キリスト教に対する問題提起となった。しかし、宗教多元主義は非西洋的な社会においても、批判的な役割をもちうるのか。本稿では、滝沢克己を宗教多元主義者として位置づけ、この疑問について考える。滝沢は、キリスト教だけでなく日本の諸宗教によっても救済が得られると論じ、キリスト教の排他性を批判した。しかし滝沢は、この多元主義的な思想にもとづいて、日本の国体にも真理が現れていると論じ、自己の相対性を認めないキリスト教を、国体に抵触するものとして批判している。日本においては、多元主義的な言説そのものが、異物を排除/同化する一種の「排他主義」としての意味をもちうる。論文(Article)