著者
杉田 健
出版者
公益財団法人 年金シニアプラン総合研究機構
雑誌
年金研究 (ISSN:2189969X)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.68-90, 2021-07-15 (Released:2021-07-15)
参考文献数
37

本稿はナイジェリアにおける年金制度の現状と課題を論じるものである。1981年から2014年の間に世界31か国が公的年金の全部または一部の民営化(DC化)を実施したが、18か国は民営化を全面的または一部やめ、また民営化を続けている国でもチリのように公営部分を拡充させた国がある。現在民営化を続けている国の中でもっとも人口の多い、アフリカのナイジェリアは、2004年に民営化が行われ、2014年の改正を経て現在に至っている。本稿は先行研究および公表資料を基に歴史的経緯・制度内容および課題を解説する。公務員年金の歴史は植民地時代にさかのぼるが、民間被用者の年金も含めて、2004年の改正前は給付と負担のバランス、年金記録が不十分で、積立金の横領、給付の遅延が発生していた。2004年の改正によりチリに倣った確定拠出型年金に移行し、2014年以降は若干の修正が行われている。ナイジェリアの年金の課題は、適用率の低さ、インフレに資産運用利回りが追いついていないこと、利息を嫌うイスラム教徒の加入者対応、不正防止があげられる。さらに、COVID-19による失業率の上昇により拠出中断が増え、将来の年金額への影響が懸念されている。