著者
杉谷 邦子
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.39-48, 2018 (Released:2019-03-08)
参考文献数
10

複視に対する手術や光学的治療は、正面位と下方視の複視消失を目標に行われるが、非共同性偏位のため、治療後も周辺に複視が残ることが多い。患者はそれを頭位で代償するか、しばしば片目を閉じることになり、首や肩の疲労により苦痛を訴えることがある。当科では従来のプリズム治療に遮閉膜による部分遮閉を追加することで、周辺に残る複視の治療を行ってきた。 「両眼開放」、「日常9方向での複視消失」および「周辺視野の確保」という三つの目標を設定し、院内手順(S-S method)に従い三段階で治療を進めている。step 1として正面位をプリズムで矯正し、周辺に複視が残った場合step 2、step 3へと進み、0.1遮閉膜(Bangerter occlusion foils, Ryser Optik社製)を用いた部分遮閉を行っている。step 2は眼鏡レンズ周辺を部分遮閉し、step 3はレンズ中心にspot patchを貼っている。それにより目標であった両眼開放はもとより、9方向での複視消失と周辺視野が確保され、患者は快適な開放感に加え、歩行の安定を得ている。 S-S methodの方法と治療原理を解説し、stepごとの処方例を紹介する。またS-S methodにより周辺に複視を残さず治療ができた213名中194名(91.1%)の原因疾患と、患者が選択したstepの内訳および斜視角について治療結果をまとめた。
著者
五十嵐 千里 友成 恵 税所 信子 杉谷 邦子
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.78-82, 1994-12-31 (Released:2009-10-29)
参考文献数
4

3歳から13歳までの不同視弱視20例に対し,アイパッチ等による遮蔽により患眼視力が0.5に達した段階を開始点とし,患眼に比べ四段階健眼の視力を低下させる漸増遮蔽膜(Ryser社製)を眼鏡に貼り終日遮蔽を試みた.(0.1)遮蔽膜から貼り,患眼の視力向上に伴い遮蔽膜の程度を漸減していった.診断後まもなくこの方法で治療したA群は順調に視力が向上した.これまでアイパッチでの遮蔽を拒んでいた比較的年齢の高いB群も本方法を受入れ,視力が向上し始めた.患眼視力1.0に達した10例の平均治療期間はA群で16.3月(6~29ヵ月),B群で30.5ヵ月(30~31ヵ月),そのうち遮蔽膜での平均治療期間はA群で11.9月(5~17ヵ月),B群で20ヵ月(17~23ヵ月)であった.