著者
杉野 健太郎
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

デビュー作『楽園のこちら側』の「すべての神は死に、すべての戦争は戦われ、そして人間への信頼はすべて揺らいでいる(中略)心に神はいなかった」という「失われた世代のマニフェスト」は「罪の赦し」(1924)というカトリック教会からの離脱物語まで続く。しかし、翌年の代表作『グレート・ギャツビー』(1925)で私がモダンな信仰と呼ぶような近代的信仰が成立する。モダンな信仰とは、近代的の啓蒙思想の流れにあり、アメリカのポジティヴな思想などとも通底する世界と自己に関する楽観的信仰であり、現在もよりどころとされる人権思想とも深く関わっている。しかし、その信仰も次作『夜はやさし』(1934)では失われてしまう。