著者
杉野 衣代
出版者
大阪市立大学都市研究プラザ
雑誌
都市と社会
巻号頁・発行日
no.3, pp.104-127, 2019-03

ハウジングファースト(Housing First)は1992年に米国ニューヨーク市で始まったホームレス支援方式であり、まず先に住まいを提供しその後本人のニーズに応じて支援を提供するモデルである。本稿では、近年東京において始まったこのハウジングファーストという支援方式に着目する。筆者は「ハウジングファースト東京プロジェクト」構成団体の支援活動に参加しながらインタビュー調査を実施するアクションリサーチを行った。本稿では、3名の若年ホームレス経験者の事例を中心に9名(内4名はスタッフ)のインタビュー結果からハウジングファーストによる支援プロセスを明らかにすることを試みた。その結果、ハウジングファーストは、ホームレス状態から移行するシェルター入居時にハウスとホームというホームレス経験者にとっての生きる基盤を無条件に得ることができる支援モデルであることが分かった。本稿で扱った事例は少数ではあるが、既存の支援実践に加えてハウジングファーストも広く普及していく意義がある実践ではないかと考える。